国鉄を民営化したのは赤字だったから
国鉄(日本国有鉄道)が民営化された理由は、その経営が長期にわたり赤字続きで巨額の債務を抱えていたためです。1964年(昭和39年)に初めて赤字に転落し、その後も赤字が拡大し続け、最終的には約37兆円の累積債務に達しました。この赤字拡大の主な原因は、戦後の大量採用による人件費の膨張、モータリゼーションの進行による貨物・旅客の需要減少、運賃の政治的な低水準設定、そして新幹線建設などの巨額投資が国鉄の経営を圧迫したことです。
国鉄は政府からの十分な補助金を得られず、自己資金や借入金で運営していたため、利払いや退職金負担が重く、経営が持続不可能となりました。こうした財政状況の悪化を背景に、1987年に赤字削減と経営改善を目的とした分割民営化が実施されました。民営化により各地域に分かれた会社がより効率的な経営を目指す形となりましたが、累積債務の処理は国が引き受けた形です。
まとめると、国鉄の民営化は経営の赤字拡大と巨額債務という財政問題の解決を目指したものでした。
郵政民営化は郵便事業の先細りと将来の赤字化懸念から
郵政民営化は、主に郵便事業の先細りと財政負担の拡大リスクを背景に行われました。郵便事業自体は以前は黒字でしたが、インターネットの普及で郵便物が激減し、市場縮小による収益の減少が進んでいます。民営化前の郵政公社では郵便貯金の資金を国が特殊法人などに貸し出す形で補填していたため、実質的には国が約1兆円規模の補助をして黒字を維持していた面がありました。しかし、このままの運営では「第二の国鉄」化し、15年以内に財政的に持続困難になるとの見通しから抜本改革として民営化が決定されました。
また、民営化後は郵便貯金銀行が郵便局会社に支払う委託手数料に消費税が課されるなどの影響で、民営化するとむしろ郵便貯金事業が赤字化するとの政府試算もありました。一方で郵便事業そのものも電子メールやECの普及による需要減少で赤字化が進み、2025年現在では郵便事業単独で600億円を超える赤字が生じています。この赤字の根本は、郵便物の減少と若い世代の郵便利用離れにあります.
つまり、郵政民営化は単に赤字事業を民営化したからというより、民営化前の構造的な財政補填とリスクの問題、業績の将来的悪化リスクへの対応策として行われた政策です。
まとめると:
- 民営化前の郵便事業は表面上は黒字だったが、官の補填があってのことだった
- インターネット普及で郵便物が大幅減少し、事業自体の収益が悪化
- 民営化による仕組み変化で郵便貯金事業が赤字化する見込みもあった
- それでも将来の財政リスクや事業持続の困難さから改革が推進された
- 現在は郵便事業の赤字が深刻化し、抜本的収益改善が求められている
このような背景から、郵便事業が赤字だったというより、財政補填の仕組みと将来の事業持続可能性を考慮した上での民営化だったことがわかります

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