現時点で日本が新興国に「転落」したという事実はない
人口減少や成長力の鈍化、財政問題への対応が遅れれば、国際的な影響力や経済的な豊かさで「新興国に近づく」
今後の政策対応や構造改革次第で地位を維持・回復する余地はある
日本が先進国から新興国へ転落する
- 近年の日本経済の停滞や人口減少、相対的な国力低下を背景にしばしば話題となっていますが、現時点で日本が新興国に転落したという事実はありません。ただし、いくつかの重要な論点があります。
1. 経済規模と国際的地位の低下懸念
- 日本の経済規模(GDP)は、円安や成長停滞の影響で世界3位から転落する可能性が指摘されています。実際、2023年にはドイツに抜かれるとの見通しもありました。
- ただし、これは為替レートによる一時的な現象も含まれており、短期的な順位変動に過剰反応すべきではないという意見もあります。
2. 1人当たりGDPや実質賃金の低迷
- 日本の1人当たりGDPや実質賃金は、過去30年間ほとんど改善しておらず、先進国グループ内でも下位に位置しています。
- これは、経済厚生や生活水準の観点からみて、日本の「先進国」としての地位が相対的に低下していることを示唆しています。
3. 人口減少と成長力の鈍化
- 日本は少子高齢化と人口減少が進行しており、今後も労働人口・消費人口の減少が続く見込みです。これが経済成長の制約要因となっています。
- 一方で、新興国は人口増加と内需拡大を背景に高成長を続けており、世界経済の重心が新興国にシフトしつつあります。
4. 財政・通貨の信認リスク
- 日本の巨額な公的債務や財政健全化の遅れが、将来的に「新興国化」リスクとして指摘されています。特に、円が国際通貨としての地位を維持できるかどうかが注目されています。
5. 先進国から新興国への転落は歴史的に稀
- 歴史的に、先進国から新興国へ転落した例は非常に少なく、19世紀末のアルゼンチンなどが例として挙げられるのみです。日本が即座に新興国へ転落する可能性は現実的には低いとされています。
まとめ
- 日本は依然として経済規模・技術力・国際的信用を持つ先進国ですが、相対的な地位低下や「新興国化」リスクが議論される状況にあります。
- 今後も人口減少や成長力の鈍化、財政問題への対応が遅れれば、国際的な影響力や経済的な豊かさで「新興国に近づく」との懸念は続くでしょう。
- ただし、現時点で日本が新興国に「転落」したという事実はなく、今後の政策対応や構造改革次第で地位を維持・回復する余地も残されています。
エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?
- 地球平面説(フラットアース)、気候変動否定、反ワクチン、反GMO、陰謀論など、科学的証拠を否定する人々の思考と行動原理を分析し、彼らとどう向き合い、説得できるのかを探るノンフィクションです。
著者は科学否定論者に共通する5つの特徴として、以下を挙げています。
- 証拠のチェリーピッキング(都合の良い証拠だけを選ぶ)
- 陰謀論への傾倒
- 偽物の専門家への依存
- 非論理的な推論
- 科学への現実離れした期待
マッキンタイアは、単なる理論的分析にとどまらず、実際に科学否定論者の国際会議に潜入し、彼らと直接対話するなど、現場での取材も行っています。その中で明らかにされるのは、科学否定はしばしばアイデンティティや信頼の問題と結びついており、単に証拠を示すだけでは人々の考えは変わらないという現実です。
本書では、科学否定論者を説得するためのアプローチとして、
- 共感・敬意・傾聴による信頼関係の構築
- 感情的な対立を避け、相手の話を丁寧に聞く
- 世界観やアイデンティティを否定せず、別の立場を明確に伝える
といった、社会心理学的な手法が有効であることが論じられています。
また、科学否定がインターネットや政治の世界で拡大している現状を踏まえ、「ポスト真実」の時代における事実と科学の守り方についても提言しています。
目次には、フラットアース国際会議への潜入記、科学否定の定義、意見を変える方法、気候変動否定論、信頼と対話、新型コロナウイルス問題など、現代的なテーマが並びます。
この本は、科学否定論のリアルな実態に迫る重厚なルポルタージュであり、現代社会における「事実」と「信頼」の意味を問い直す一冊です。