米議員による「中国株追放」要求の背景と内容

米中貿易戦争 China–United States trade war

米議員による「中国株追放」要求の背景と内容

米中間の緊張が続く中、米国議会では中国共産党や中国軍と深い関係を持つ中国企業を米国証券市場から締め出す動きが強まっています。2025年5月2日、米共和党のリック・スコット上院議員とジョン・ムレナール下院議員は、米国証券取引委員会(SEC)に対し、米国で上場している25の中国企業に適切な措置を講じるよう書簡で要請しました。

議員らは、これらの中国企業が中国共産党や中国軍と密接な関係を持ち、米国の国家安全保障上の脅威となり得ると指摘。「米国の投資家にとって容認できないリスクをもたらす」と強く批判しています。

名指しされた主な中国企業

書簡で名指しされた企業には、以下のような中国主要企業が含まれます。

  • アリババ
  • バイドゥ
  • JDドットコム(京東)
  • ウェイボー
  • 小馬智行(Pony.ai)
  • 禾賽科技(ホーサイ・テクノロジー)
  • テンセント・ミュージック
  • 大全新能(ダコニューエナジー)

これらの企業は、ナスダックやニューヨーク証券取引所に上場しており、米国の資本市場を利用して資金調達を行っています。

米議会の主な懸念

  • これらの企業は「一見すると民間企業だが、実際には中国当局の“邪悪な目的”のために動いている」との批判。
  • 中国共産党による企業支配の実態が体系的に隠蔽されており、米国投資家はリスクを十分に認識できていない。
  • 米国の資本市場が中国軍の近代化や人権弾圧を間接的に支援している可能性。

求められている措置

議員らはSECに対し、「外国企業説明責任法(HFCAA)」に基づき、これら中国企業の証券登録抹消と米国内での取引即時停止を求めています。

米中資本市場の現状とリスク

2025年3月時点で、米国に上場している中国企業は286社、時価総額は1兆1,000億ドル(約160兆円)を超えています。米国議会は2020年に「外国企業説明責任法」を成立させ、外国企業に米国基準の監査義務を課しています。基準を3年連続で満たさない場合は上場廃止となります。

中国当局と米国側は一部監査で合意しましたが、依然として透明性や監査体制に懸念が残っています。

金融機関・専門家の見方

  • モルガン・スタンレーは「全ての中国株が一斉上場廃止となれば、中国株式市場全体の下方修正が避けられない」と分析。
  • ジェフリーズは「米国は中国株の上場廃止や米資本の流入禁止という強力な手段を持つ」と指摘し、安全保障政策の一環であるとしています。
  • 米財務長官も「中国が譲歩しなければ全中国株の上場廃止も排除しない」と発言。

影響と今後の見通し

米国証券市場での上場廃止は、中国企業にとっては最大の資金調達の場を失うことを意味し、資金調達能力に深刻な打撃となります。多くの中国企業は香港市場への上場を進めており、米国市場からの撤退に備える動きも見られます。

投資家にとっても不確実性が高まっており、上場廃止リスクが現実化すれば、投資先の選択肢が狭まり、保有資産の評価額下落や売買困難といったリスクが生じます。

米中関係の緊張が高まる中、中国株をめぐる動きは単なる市場ルールの問題だけでなく、国家間の戦略的競争や地政学的・安全保障上の要因が大きく影響する状況となっています。

中国株追放せよ 米議員が名指し

2025年5月12日162

米中間の緊張が続くなか、中国共産党や中国軍と深いつながりを持つ中国企業を米国の証券市場から締め出す動きが始まっています。

米中間の緊張が続く中、米国議会では中国共産党や中国軍と深い関係を持つ中国企業を米国証券市場から締め出す動きが加速しています。2025年5月2日、米共和党のリック・スコット上院議員とジョン・ムレナール下院議員は、米国証券取引委員会(SEC)に対し、米国で上場している25の中国企業に対して適切な措置を講じるよう求める書簡を送りました。

議員らは、これらの中国企業が中国共産党や中国軍と密接な関係を持ち、米国の国家安全保障上の脅威となり得ると指摘。「米国の投資家にとって容認できないリスクをもたらしている」と強く批判しています。書簡の中では、「一見すると商業目的の民間企業だが、最終的には中国当局の“邪悪な目的”のために動いている」との厳しい表現も使われました。

背景には、2020年に成立した「外国企業説明責任法(HFCAA)」があります。この法律は、米国市場に上場する外国企業に対して米国基準の監査を義務付け、3年連続で基準を満たさない場合は上場廃止とするものです。中国企業は国家安全保障やデータ流出の懸念から監査情報の開示に消極的であり、これが米国側の不信感を高めています。

実際に、米国市場からの中国企業締め出しの動きはすでに進行しており、2022年以降は中国国有大手企業や民間大手企業も上場廃止や自主的な撤退を進めています。米国の金融機関も、中国株の一斉上場廃止が中国市場全体や投資家に大きな影響を及ぼすと分析しています。

米議員らの要求は、単なる経済的措置にとどまらず、安全保障や地政学的な観点からも中国企業の米国市場からの排除を進めるものです。今後も米中間の資本市場デカップリング(切り離し)が進行し、中国企業は香港や中国本土市場へのシフトを加速させる見通しです。