トマ・ピケティ 世界の支配権を失いつつある米国が破れかぶれの政策を断行する理由
トマ・ピケティによる米国の現状分析と主張の要点
この記事は、フランスの経済学者トマ・ピケティによる連載「新しい“眼”で世界を見よう」の最新回であり、米国の世界支配力の低下と、それに伴う米国の政策の変化について論じています。
主なポイントは以下の通りです:
- 米国はもはや「信頼に足る国」ではなくなりつつあり、その兆候はすでに過去のイラク戦争(2003年)などにも現れていたが、現在の危機はより根本的で深刻だと指摘しています。
- 今回揺らいでいるのは、米国の「経済力」「金融力」「政治力」といった国家の基盤そのものであり、統治も不安定で、先の見通しが立たない状況にあるとしています。
- ピケティは、米国の「トランプ派」が強硬かつ破れかぶれの政策を断行している背景には、自国経済の弱体化に対する有効な対策が見いだせないことがあると分析しています。
- 購買力平価(PPP)ベースで見ると、中国のGDPは2016年に米国を追い抜き、現在は米国より30%も大きく、2035年には米国の2倍になると予想されています。これは米国が世界の支配権を失いつつある現実を示すものだと述べています。
- さらに深刻なのは、米国の公的機関と民間の対外債務が過去最大規模に膨れ上がっており、2025年には対GDP比で70%に達している点です。金利が上昇すれば、米国から世界への利払いが大きく増えるリスクがあります。
- これまで米国が金融システムを支配していたため問題が顕在化しなかったが、支配力の低下とともにリスクが顕在化しつつあると警鐘を鳴らしています。
- トランプ派の経済学者が「米国債の外国人保有者に対する利子課税」を提言した背景には、財政赤字の穴埋めという切迫した事情があるとし、トランプがグリーンランド、パナマ、ウクライナの鉱物資源を狙うのも同様の文脈だと解説しています。
まとめ
ピケティは、米国の国際的な信頼と支配力の低下、経済・財政の脆弱化、そしてそれに伴う米国の「破れかぶれ」的な政策転換を厳しく批判しています。特に中国の台頭と米国の債務膨張が、今後の世界秩序に大きな変化をもたらす可能性を強調しています。