フランスや欧州各地で農家の危機 社会の不平等や経済システムが構造的に不公平

トマ・ピケティ 不平等の問題に取り組まなければ、フランスは「農家の危機」から抜け出せない

フランスの「農家の危機」と不平等問題:ピケティの分析要約

トマ・ピケティによるコラム「不平等の問題に取り組まなければ、フランスは『農家の危機』から抜け出せない」(Courrier Japon掲載)は、フランスや欧州各地で顕在化している農家の危機が、社会の不平等や経済システムの構造的な不公平さと密接に結びついていることを指摘しています。

農家の危機の現状

  • 近年、フランスやヨーロッパ各地で農家の経済的困難が深刻化している。
  • これは単なる農業政策の問題ではなく、社会全体の不平等や経済システムの歪みを反映した現象である。

当局の対応とその問題点

  • フランスおよびEU当局は、農家の危機に対して農薬規制の緩和など、過去の延長線上にある対策を講じている。
  • これらの対応は、環境汚染を悪化させる一方で、根本的な不平等や経済的自由主義の問題には手を付けていない。

農家の所得データの解釈

  • 2022年のフランスの農家の平均年収が5万6014ユーロ(約921万円)という統計が拡散され、世論を驚かせた。
  • しかしこの数字には注意点がある:
    • 最も小規模な農家の一部が調査から除外されている(農地面積の95%、農畜産物の99%はカバー)。
    • 「収入」の定義は、フルタイムで働く一人当たりの平均年収であり、借入金の利息や設備の減価償却費など経費を差し引いた後の金額。ただし所得税や社会保険料は未控除。
  • このため、見かけ上の高収入は実態を正確に反映していない場合がある。

格差の拡大と構造的問題

  • 農業分野では他の職種以上に格差が大きい。農家の間でも大規模経営と小規模経営で大きな所得差が存在する。
  • 根本的な不平等の是正や経済システムの見直しなしに、持続可能な農業や社会の発展は望めないとピケティは主張する。

結論

ピケティは、農家の危機を単なる農業政策の問題としてではなく、社会全体の不平等や経済システムの構造的な歪みの現れと捉え、根本的な改革の必要性を強調しています。現状の政策対応では、格差や不公平が解消されず、持続可能な発展には繋がらないと警鐘を鳴らしています。