中国が「核融合大国」へ爆進中 米国からのヘゲモニー移行進める可能性も
中国が核融合で「覇権」を握る条件と現状
- 中国が米国からエネルギー覇権(ヘゲモニー)を奪うために必要な条件は、核融合技術の実用化・商業化で世界をリードし、その成果を経済・軍事・外交の各分野に波及させることです。
中国の核融合技術開発の現状
- 中国は国家主導で核融合開発に巨額投資を続けており、年間の核融合関連投資額は米国政府の2倍に達しています。
- 2027年にはコンパクト型核融合実験装置(BEST)を完成予定で、2030年までに「核融合による灯りを点灯させる」と中国のトップ科学者が明言しています。
- 2024年には、トリウム溶融塩炉で運転中の燃料補給に世界で初めて成功するなど、核分裂・核融合の両分野で技術的なブレークスルーを続けています。
- 「人工太陽」と呼ばれるEAST(全超伝導トカマク型核融合エネルギー実験装置)では、1066秒間の高閉じ込めプラズマ維持に成功し、世界記録を更新しています。
米中・西側諸国との比較
- 米国や欧州は民間主導の投資が中心で、短期的リターンを重視する投資家の意向に左右されやすく、国家戦略としての一貫性や資金力で中国に劣る状況です。
- 米国のCommonwealth Fusion Systems(CFS)は2030年代前半の商用化を目指していますが、中国はそれより早い実証・商用化を狙っています。
- 日本やドイツは核融合研究で一定の技術力を持つものの、商業化競争では米中に後れを取っています。
覇権移行に必要な条件
中国が米国から覇権を奪うには、以下の条件が不可欠です。
- 核融合発電の商業化で世界最速の実現→ エネルギーコストの劇的低下、CO₂フリーの電力供給体制の確立。
- 核融合由来の安価で安定したエネルギーを基盤とした産業・軍事力の強化→ AI・データセンター・ロボット・EVなど次世代産業での競争優位。
- 技術輸出と新エネルギー同盟の構築→ エネルギー自給と技術供与による国際的影響力の拡大。
- 西側諸国が短期的利益や既存エネルギー業界のロビイストに足を引っ張られる一方で、中国が長期国家戦略で一貫して投資を続けること。
地政学的インパクト
- 核融合エネルギーの実用化は、従来の化石燃料依存型エネルギー地政学を根本から変革し、中国が新たな「エネルギー覇権国」として台頭する可能性を持ちます。
- これは20世紀における石油覇権の米国・ソ連に相当する戦略的優位性を中国にもたらす可能性があり、世界秩序に大きな転換をもたらすでしょう。
技術的・商業的課題
- 現時点では、プラズマの安定制御、超高温材料の耐久性、エネルギー変換効率など、商業化までの技術的ハードルは依然として高いとされています。
- 一部には「10年以内の商用化」という声もありますが、実際の時期は不透明です。
まとめ
- 中国が核融合エネルギーの商業化で世界に先行し、安価で豊富なエネルギーを武器に経済・軍事・外交の各分野で優位に立つことが、米国から覇権を奪うための現実的な条件です。現状、中国は国家戦略としてこの目標に最も近い位置にいますが、技術的課題の克服と商業化のタイミングが決定的なカギとなります。