ロシアとウクライナの戦争 インフラ破壊を通じて、相手国の戦争遂行能力と国民生活を直接的に狙う新たな戦争形態

今後の国際紛争の前例となる

ロシアとウクライナの「エネルギー戦争」、発電施設を破壊するそれぞれの目的

エネルギー戦争の実態

  • ロシアによるウクライナ侵攻は、単なる領土や資源の争奪戦ではなく、発電所・送電線・石油精製所などのエネルギーインフラ自体が主な攻撃対象となる「エネルギー戦争」という様相を強めている。

なぜエネルギー施設を攻撃するのか

ロシアの狙い

  • ロシアは2022年の侵攻開始当初から、ウクライナの民間人・軍事施設・電力網への攻撃を戦略の柱としてきた。
  • 特に発電所や送電線などのエネルギー施設への攻撃を強化しており、これによりウクライナの防衛産業や軍事活動に不可欠な電力供給を断つことで、ウクライナの防衛能力全体を低下させることが狙いとされる。
  • 実際、2024年にはウクライナ東部の大規模火力発電所が完全に破壊され、大規模停電が発生するなど、ウクライナ社会・経済に深刻な影響が出ている。

ウクライナの狙い

  • ウクライナは2024年、西側諸国から長距離兵器の使用許可を得て以降、ロシア国内の石油精製所や貯蔵施設への攻撃を本格化させた。
  • これらの施設ではガソリン・ジェット燃料・ディーゼルなど高付加価値燃料が生産・備蓄されており、ロシアの戦費の主要財源となっているため、攻撃による経済的打撃を狙っている。
  • 特に2025年にはドローン技術を駆使し、モスクワ近郊やボルゴグラードなど国境から遠く離れた製油所にも被害を与えている。

両国の目的と重なる点

  • ロシアはウクライナの防衛力・社会インフラを破壊し、市民生活を困難にすることで戦意を削ぐことを目的としている。
  • ウクライナはロシアの戦争資金源であるエネルギー産業に打撃を与え、戦争継続能力を削ぐことを狙っている。
  • いずれの攻撃も、エネルギーインフラの脆弱性を突き、相手国の戦争遂行能力と国民生活に直接的なダメージを与える点で共通している。

今後の影響

  • この「エネルギー戦争」は、将来の紛争においてもエネルギーインフラが主戦場となる可能性を示唆している。
  • 欧州や世界のエネルギー安全保障にも波及し、エネルギー供給や価格、国際的なエネルギー政策に大きな影響を与えている。

まとめ

  • ロシアとウクライナの「エネルギー戦争」は、単なる資源争奪ではなく、発電所や精製所といったインフラ破壊を通じて、相手国の戦争遂行能力と国民生活を直接的に狙う新たな戦争形態であり、今後の国際紛争の前例となる可能性が高い。

地図でスッと頭に入る世界の民族と紛争’23
B0CG9DHJRT