中国製太陽光パネルが日本市場を席巻する現状
- 日本の太陽光パネル市場は、近年、中国製品が圧倒的なシェアを占めています。2024年に日本国内で出荷された太陽光パネルの約95%が海外製であり、そのうち8割超が中国製です。この現象の背景には、以下の要因があります。
- 中国メーカーによる低価格・大量生産体制
- 中国政府による補助金や融資、税制優遇などの手厚い産業支援
- 日本政府の固定価格買取制度(FIT)による需要拡大
- 日本市場におけるコスト重視の傾向
これにより、中国メーカーは価格競争で優位に立ち、日本メーカーは高品質・高価格路線を維持したものの、コスト競争で後れを取り市場シェアを失っています。
低価格の裏に潜む人権問題
- 中国製太陽光パネルの低価格を支える構造の一つとして、ウイグル自治区での人権問題が国際的に指摘されています。具体的には、太陽光パネルの主要原材料である高純度シリコンの生産過程で、ウイグル自治区における強制労働が関与している疑惑が浮上しています。
- 米国では「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」が施行され、ウイグル産製品について強制労働が関与していないことを証明できない限り、原則輸入できなくなっています。そのため、米国では太陽光パネルの輸入が差し止められる事例が相次いでいます。
世界市場での中国の圧倒的存在感
- 中国は高純度シリコン原料からセル・モジュールまで一貫供給できる産業基盤を持ち、世界の太陽光パネル製造能力の大部分を占めています。例えば、シリコンウェハーの世界生産能力の約98%、太陽電池セルは85%以上、モジュール(パネル)は77%前後が中国勢によるものです。この圧倒的なスケールメリットが低価格競争力の源泉となっています。
まとめ
- 日本市場の太陽光パネルは中国製が圧倒的多数を占めている。
- 低価格の背景には中国政府の産業支援と大量生産体制がある。
- 一方で、ウイグル自治区での強制労働疑惑など人権問題が国際的に懸念されている。
- 米国など一部諸国では、こうした人権問題を背景に中国製パネルの規制が進んでいる。
- 日本市場においても、安価な中国製パネルの普及と、倫理的・人権的な課題の両面を考慮した議論が今後一層求められています。
「ウイグル強制労働」日本企業の関与調査と国際的懸念
背景
- 中国・新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)でのウイグル人やチュルク系民族への人権弾圧、特に国家主導の強制労働が国際社会の重大な懸念事項となっています。強制労働は単なる労働環境の問題にとどまらず、民族的・宗教的アイデンティティを理由とした恣意的拘束や拷問、強制不妊手術など、体系的な人権侵害の一部とされています。国連や欧米諸国はこれを「ジェノサイド」や「人道に対する罪」と認定しています。
国際社会の対応
- 米国はUFLPA(ウイグル強制労働防止法)を施行
- 欧州でも2024年3月に強制労働に関与した製品の流通を禁じる規制案で暫定合意
- BASFやフォルクスワーゲンなど大企業が現地事業から撤退
日本企業の関与調査
- 2025年5月16日、日本ウイグル協会と国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」が記者会見を開き、日本企業とウイグル強制労働の関係性について報告。
調査対象
- 日系企業35社と日本進出の中国企業6社、計41社
主な調査結果
- 41社中83%(34社)が何らかの形でウイグル強制労働に関与の疑い
- 現地で事業展開している:1社(日立製作所)
- 強制労働の疑いがある企業と直接取引(1次サプライヤー):8社
- 間に1社だけ挟む形で取引(2次サプライヤー):10社
- 2社以上挟む形で取引:複数社
具体的な企業名(一部抜粋)
現地で事業展開
- 日立製作所
1次サプライヤー
- パナソニックオペレーショナルエクセレンス
- 三菱自動車
- 三菱電機
- シャープ(取引停止)
- 丸久(取引停止)
- 丸紅
- artience(旧:東洋インキSCホールディングス)
- ジンコソーラー(JinkoSolar Japan Co., Ltd.)
2次サプライヤー
- パナソニック
- トヨタ自動車
- ホンダ
- 三菱商事
- ユニクロ
- 旭化成エレクトロニクス
- 伊藤忠商事
- ネクスティ エレクトロニクス
- 岩谷産業
- トリナ・ソーラー(Trina Solar Japan Ltd.)
その他(2社以上挟む)
- ソニー
- 東芝
- キヤノン
- オムロン
- 京セラ
- ミツミ電機
- TDK
- 良品計画(無印良品)
- しまむら
- 伯東
- 菱洋エレクトロ
- BYD(日本法人)
- JAソーラー(JA Solar Japan Co., Ltd.)
日本の現状と課題
- 日本政府は具体的な制裁措置を講じていない
- 多くの企業も人権デューディリジェンスの観点から十分な対応を示していない
- 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」では、企業がサプライチェーン全体で人権尊重責任を負うことが明確化
- 日本が制裁逃れの「抜け穴」として世界から注目されている
今後求められる対応
- 透明性のある調査体制の整備
- 企業への明確な法規制
- サプライチェーン全体での人権尊重の徹底
まとめ
- ウイグル強制労働問題に対する国際的な関心が高まる中、日本企業と政府の対応が厳しく問われています。今後の対応次第で、日本の国際的信用や人権問題への姿勢が大きく左右されることになります。