2025年11月11日 米国 アフリカで中国を抜き最大投資国に 一帯一路に対抗
2023年にアメリカの対アフリカ直接投資額は78億ドル(約1兆2000億円)に達し、中国の40億ドルを上回って、アフリカ最大の投資国となりました。これは2012年以来のことで、アフリカ大陸のリチウム、レアアース、コバルト、タングステンなどの重要鉱物をめぐる米中対立の新たな焦点となっています。
投資は米国の国際開発金融公社(DFC)が主導し、2019年にトランプ政権下で設立されました。DFCは中国共産党の影響力拡大に対抗するため、インド太平洋戦略の一環として「高品質なインフラ投資」を海外で推進しています。2024年には、ルワンダの鉱山会社がDFCの資金援助を受け、米国内のサプライチェーン構築に取り組んでいます。
一方、中国の「一帯一路」構想によるアフリカへのインフラ投資は、2021〜2022年に前年比約55%減少し、75億ドルにとどまっています。中国は過去20年間で総額1550億ドルを投じて影響力を強めてきましたが、近年は経済減速や債務問題で投資が鈍化しています。
西側諸国もアフリカでの関与を強めており、アメリカはG7とともに「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」に参加し、EUも新たな対アフリカ政策を打ち出しています。これらの動きは、中国の一帯一路戦略へのけん制となっています。
2025年10月27日 アフリカの3億人に電力を──世界銀行も支援するナイジェリアの再エネ革命
ナイジェリアをはじめとするアフリカ全体での再生可能エネルギー革命は、世界銀行とアフリカ開発銀行が協力して推進している「ミッション300」が中核となっています。このイニシアティブは2030年までにサブサハラ・アフリカ内の3億人に電力を供給することを目標に掲げています。世界銀行は2億5000万人に、アフリカ開発銀行は5000万人にそれぞれ電力供給を行う計画です。
現在アフリカでは6億人近くが電力にアクセスできず、この状況が医療、教育、生産性の向上や雇用創出の大きな障壁となっています。再生可能エネルギーとしては太陽光や風力を活用し、分散型電力システムやミニグリッドの整備を進めることにより、都市部だけでなく未開地にも安定した電力を届けることを目指しています。
ナイジェリアでは政府と中央銀行が連携し、国内再生可能エネルギー技術の発展を支援、ソーラー機器の製造や組み立てを担うスタートアップ企業の育成も進めています。地域の送電網改革や料金体系の透明化、生産コストに基づく料金設定などの制度改革も重要視されています。
この動きは、アフリカが豊富に持つ太陽光や風力、水力などのクリーンエネルギー資源を活用し、外部資金依存を減らしながら経済成長や雇用創出を促進するための大規模な挑戦という位置づけです。加えて、電力の安定供給と手頃な料金を確保するための電力セクター改革も世界銀行と地域機関の支援のもと進行中です。
まとめると、ナイジェリアの再生可能エネルギー革命は「ミッション300」という国際的な支援と連携のもと、分散型の太陽光発電システム整備や制度改革を通じて、アフリカの約3億人にクリーンで安定した電力を提供し、社会経済の根本的な改善を目指す包括的な取り組みとなっています。
GEAPP イケア、ロックフェラー、ベゾス・アース・ファンドが共同設立した団体
この記事は、ナイジェリアにおける再生可能エネルギー拡大の最新動向を分析したもので、アフリカの電力改革の転換点を描いている。以下に要点をまとめる。
ナイジェリアでは、従来リスクが高いと見なされてきたソーラー・ミニグリッド導入が急速に進展している。世界銀行と「人と地球のためのグローバル・エネルギー同盟(GEAPP)」の支援が背景にあり、GEAPPはイケア財団、ロックフェラー財団、ベゾス・アース・ファンドが共同設立した団体だ。GEAPPは初期リスクを肩代わりし、シード資金と技術支援を提供することで、国家政策に影響を及ぼすほどの実証成果を生み出した。
この成功を受け、規制当局は再生可能エネルギーの導入を義務化。世界銀行はミニグリッド拡大に1億2700万ドル、農業・冷蔵部門支援に5000万ドルを追加投入した。結果、わずか320万ドルの初期投資から総額1億7700万ドルにまで資金が拡大し、同国の電力市場は二酸化炭素削減と雇用創出を両立する形に転換している。
GEAPPはアフリカ全域で約42億ドル、インドで10億ドル、東南アジアで17億ドルなど、計78億ドルの投資を呼び込み、世界で9100万人に電力を供給してきた。これらは5億300万ドル(約770億円)の元手を15倍に膨らませる実績を示しており、特にアフリカでの波及効果が顕著だ。
この流れは、アフリカ開発銀行と世界銀行が共同推進する「ミッション300」とも連動し、2030年までに3億人へ電力を届ける目標を後押しする。ナイジェリアで確立されたモデルは、政策整合性、技術知見、地域社会の協働を前提に、他国への展開が期待されている。
他方で、一般的な開発支援分野では「期待値」ばかり大きく実績の乏しい例が多く、GEAPP型の持続可能モデルは例外的成功とされる。ナイジェリアが信用を得た要因は、規制機関との連携により再エネ調達義務を制度化し、民間投資を呼び込む「実装重視型プロセス」を形成した点にある。
現地企業Prado Powerをはじめ、中国エネルギー企業も類似事業を展開しており、電力供給の裾野は拡大中。灌漑・冷蔵・中小企業支援など生活インフラとの連動が進み、エネルギーアクセスが経済成長と直結し始めている。ナイジェリアのこの成功モデルは、公平で包摂的なエネルギー転換を目指すアフリカ、さらにはグローバル・サウス全体への実践的な指針と捉えられる。
日本国内に形成された在日中国人社会の実態を豊富な取材をもとに描いたルポルタージュです。
この本では、現在日本に住む中国人が80万人を超え、彼らだけの経済圏が形成されていることを明らかにしています。食材の売買やサービスも、中国人どうしでほぼ完結するコミュニティがあり、中国から持ち込まれた社会構造やSNSでの情報交換などが詳細に紹介されています。
また、多様な背景を持つ中国人の姿を通じて、彼らの生活、考え方、日本に対する印象や悩みなどを多角的に描写しています。中国語が使われる地域の団地や中華学校の様子、経営者や留学生の実情、地域によって異なる中華料理店の利用の違いなど、日本人があまり知らない在日中国人のリアルな日常も掘り下げています。
著者の中島恵はジャーナリストで北京大学や香港中文大学に留学経験があり、中国・アジア関連の記事を多く執筆してきました。本書は、日本社会のなかに存在する「小さな中国社会」の現状とその社会構造の特徴を掘り下げ、日本人が持つステレオタイプとは異なる実態を伝える内容となっています。

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