参勤交代の目的「大名の勢いをそぐため」説が否定されている理由
従来の理解
江戸時代の参勤交代は、かつて「大名の勢い(経済力・軍事力)をそぐため」すなわち、大名を財政的に困窮させて幕府への反抗を防ぐための制度だと広く教えられてきました。
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近年の研究による否定理由
目的と結果の混同
参勤交代が結果的に大名の財政を圧迫したことは事実ですが、それはあくまで「結果」であって「目的」ではなかったとされています。幕府が公式に定めた『武家諸法度』などの史料では、参勤交代の主目的は「将軍への忠誠を誓わせること」「徳川幕府への服属を確認すること」とされています。
史料による裏付け
幕府の公式文書や制度設計には「大名窮乏化」や「勢いをそぐ」ことを目的とした記述がありません。むしろ、参勤交代の規定には「大名小名、在江戸交替、相定ル所也。毎歳夏四月中参勤致スベシ。」とあり、定期的に将軍に挨拶・礼を尽くすことが重視されています。
封建制度の本質との矛盾
封建制度は本来分権的であり、最大の封建領主である徳川氏のもとにすべての大名が参勤すること自体が異質です。参勤交代は、将軍と大名の主従関係を可視化し、全国の秩序維持や幕府の権威の確認が主眼でした。
幕府自身が制度を緩和した事実
幕末には参勤交代の負担が大きすぎるとして、幕府自らが制度を緩和しています。もし本当に「大名の勢いをそぐ」ことが目的なら、幕府が自らその手段を緩めることは矛盾します。
人質制度との連動
参勤交代と同時に、大名の正室や嫡子を江戸に住まわせる「人質」制度がありました。これも大名の忠誠確保が主目的であったことを示しています。
まとめ
参勤交代の目的が「大名の勢いをそぐため」とされていたのは、結果として大名が財政的に苦しくなったことからの後付け解釈に過ぎません。近年の研究や史料分析では、主目的は「将軍への忠誠の確認」と「幕府の権威維持」であり、「大名窮乏化」は本来の目的ではなかったことが明らかになっています。