「武器輸出で国家が大儲けできる」というのは過度な期待 実際はリスクも大きい分野

武器輸出で儲かるは幻想 フランスは7兆円赤字

「武器輸出で儲かるのは幻想であり、フランスは7兆円赤字」という主張について:

  • フランスは世界有数の武器輸出国であり、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータによれば、近年は米国に次ぐ世界第2位のシェアを持っています。
  • 武器輸出の経済効果について、フランス軍事省と米マッキンゼー社の2014年の報告書では、「武器輸出は約4万人の雇用を創出し、貿易赤字(対GDP比)を8〜12ポイント削減した」と試算されています。
  • 一方、Dassault Rafale戦闘機の大型契約キャンセル(特にインドやエジプト向け)は事実として報じられており、これによる損失が発生したことは否定できません。
  • ただし、「フランスが武器輸出で7兆円(約600億ドル)の赤字を出した」とする具体的な公式データや、兵器輸出全体が国家財政を大きく圧迫しているという証拠は、主要な公的資料や国際機関の統計では確認できません。

武器輸出の経済効果について、フランス軍事省および米マッキンゼー・アンド・カンパニー社が実施した14年の報告書では、輸出により約4万人(防衛産業従事者の25%相当)の雇用が創出され、貿易赤字(対国内総生産〈GDP〉比)が8~12ポイント削減されたと試算された。

  • フランスの財政赤字や貿易赤字は、主にエネルギー価格や経済構造の問題が大きく、兵器輸出単体が国家財政を決定づけているわけではありません。
  • 2023年のフランスの貿易赤字は996億ユーロ(約16兆円)ですが、これはエネルギーや工業製品など全体の話であり、兵器輸出の損益だけを指しているわけではありません。

まとめると:

  • フランスの武器輸出が「大儲け」とは言い切れず、価格競争やキャンセル、政治的要因で利益を圧迫されるケースもあるのは事実です。
  • しかし、「7兆円赤字」や「兵器輸出は必ず赤字」という断定的な主張は、公式な統計や経済効果の分析とは必ずしも一致しません。武器輸出は雇用や貿易赤字削減に一定の効果があると評価されています。
  • 兵器輸出市場は全体として規模が小さく、熾烈な国際競争・政治的リスク・値引き圧力があり、安定的な高収益事業とは言い難いのが現実です。

結論:

  • 「武器輸出で国家が大儲けできる」というのは過度な期待であり、実際はリスクも大きい分野です。
  • ただし、「フランスは武器輸出で7兆円赤字」という主張には、裏付けとなる公的データや国際統計はありません。兵器輸出の損益は個別案件や年度によって大きく変動します。

軍産複合体―自衛隊と防衛産業のリアル―
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主な内容とテーマ

  • 台湾有事など安全保障環境の変化を背景に、自衛隊の安定運用には防衛産業の再興が不可欠であると指摘。
  • 日本の防衛産業は「顧客は自衛隊だけ」「大企業の弱小部門」「死の商人批判」など、多くの足かせを抱えており、撤退を考える企業も少なくない現実を明らかにしています。
  • 装備品の調達の難しさ、国産化の意義、利益率の低さ、競争入札の不向きなど、現場の課題を具体的に解説。
  • 「靴下のことを考えろ!」など、現場の細部にまで目を向け、装備品の重要性が職種によって異なることや、知識不足による予算配分の危険性も論じています。

目次(一部抜粋)

  1. 軍産複合体は国防の基盤である
  2. 装備が可能な限り国産であるべき理由
  3. 防衛産業に適正な利潤を
  4. 装備品の調達に競争入札は馴染まない
  5. 「防衛産業を輸出で振興する」という幻想
  6. 自衛官に「第二の人生」を保障せよ
  7. 退役した装備品は備蓄に回すべし
  8. 陸上自衛隊の制服はなぜ不揃いなのか
  9. 防衛産業の事業継承は、かくも困難
  10. 靴下のことを考えろ!
  11. 空想的防衛論議に終止符を

著者について

  • 桜林美佐(さくらばやし みさ)
  • 防衛問題研究家。日本大学芸術学部卒業後、テレビ業界でアナウンサー・ディレクターとして活躍。

本書の特徴

  • 現場主義:一貫して自衛隊と防衛産業の現場取材を続けてきた著者が、リアルな実態を描写。
  • 政策提言:現状分析にとどまらず、現時点で望みうる最善手も提案しています。
  • 最新動向:防衛費倍増政策、防衛生産基盤強化法、武器輸出三原則の廃止など、最新の政策動向も解説。