経済減速がダメ押し
中国人は狂ったのか? 各地で壮絶な「ごみ争奪戦」が勃発
- 中国で「ごみ争奪戦」と呼ばれる現象が各地で発生しているのは、焼却発電施設の過剰建設と経済減速、政策の歪みが複合的に絡み合った結果です。これは「中国人は狂ったのか?」という感情的な問いではなく、制度的・経済的な構造問題に起因しています。
主な要因は以下の通りです。
- 焼却発電施設の過剰建設
2000年代以降、政府の補助金や電力買い取り優遇策を背景に、各地でごみ焼却発電所が急増しました。2017~2021年の5年間で毎年平均103カ所の新規施設が稼働し、2023年時点で中国全体の焼却能力は1日当たり約115.6万トンに達しています。しかし、実際のごみ発生量はこれに追いつかず、処理能力の4割が余剰となっています。 - 経済減速によるごみ発生量の伸び悩み
2013年以前はごみ収集量が年10%以上増加していましたが、近年は年1%程度の伸びにとどまっています。消費や物流の低迷がごみ発生量の減少に直結し、焼却炉の稼働率低下を招いています。 - 過度な業界競争(内巻)
補助金を目当てに企業が乱立し、需要を上回る設備投資が進行。その結果、稼働率は低迷し、投資回収が難しくなっています。 - ごみ不足による「争奪戦」や埋立地からの掘り返し
焼却炉を止めないため、各地でごみの取り合いが発生。埋立地から古いごみを掘り返して燃料にする「古ごみ掘削プロジェクト」も増加しています。湖南省や山東省などで、運営会社がごみを紹介した管理会社に紹介料を支払う例も出ています。 - 地域間の格差
一方で、焼却能力が過剰な地域がある一方、全国の75%を超える県レベル行政区では焼却処理能力が不足しており、地域ごとのアンバランスも問題です。
今後の課題と展望
- 補助金頼みの拡張路線の見直し
補助金縮小や稼働率低迷が続けば、業界再編や破綻が相次ぐ懸念があります。公共料金や地方財政への影響も避けられません。 - 適正規模への軌道修正
地域の実情に合わせた適正な処理能力への調整が急務とされています。 - ごみ分別・リサイクルの推進
政府はごみ分別の徹底や資源循環型社会の構築を目指しており、2025年末までに全都市でごみ分別を全面実施する方針です。
結論
- 中国の「ごみ争奪戦」は、狂気ではなく、過剰投資・政策誘導・経済減速という構造的問題の表れです。今後は、補助金依存から脱却し、持続可能なごみ処理政策への転換が求められています。
- 関上武司による2025年刊行の書籍です。中国全土に点在する中国共産党ゆかりの29施設を、著者が実際に訪問・取材し、展示物や像、解説文などを極秘撮影した記録と考察をまとめています。
本書の特徴
- 無神論国家での「聖地」
無神論を掲げる中国で、いかにして「聖なる地」が祀られ、記念されているのかを独自の視点で紹介しています。 - 現地取材と極秘撮影
著者が自ら現地に足を運び、展示物・像・解説文を独自に撮影し、現場の雰囲気や中国共産党の歴史観を生々しく伝えます。 - 「紅色旅遊」批評
浪漫・欺瞞・自己満足に満ちた「紅色旅遊」(共産党ゆかりの地を巡る観光)を、ユーモアと批評精神で描写。大躍進・文化大革命・天安門事件など、公式には語られない歴史の「不在」も強調されています。 - 収録施設・構成
本書は中国を地域ごとに分け、各地の主要な共産党関連施設を網羅的に紹介しています。主な内容は以下の通りです。 - 華北地方
天安門広場、毛主席紀念堂、中国人民革命軍事博物館、周恩来鄧穎超紀念館、華北革命戦争紀念館、中国人民解放軍海軍博物館など - 東北地方
東北抗聯博物館、長春市南湖公園、張氏帥府博物館、大連博物館、撫順煤鉱博物館など - 華中地方
魯迅公園、中国共産党第一次全国代表大会会址紀念館、杭州市革命烈士紀念館、毛沢東同志旧居など - 華南地方
南昌八一起義紀念館、江西革命烈士紀念堂、廬山会議旧址、韶山風景名勝区など - 西北地方
梁家河村、延安革命紀念館、楊家嶺革命旧址、鄧小平故里、重慶市人民大礼堂、重慶中国三峡博物館、周公館、桂園、中国民主党派歴史陳列館など
著者について
- 関上武司は、愛知県在住の技術職サラリーマンで、1977年生まれ。中国や日本のB級・珍スポットを紹介するブログ「軟体レポート」管理人であり、『中国遊園地大図鑑』シリーズの著者としても知られています。
こんな人におすすめ
- 中国共産党の歴史やプロパガンダに興味がある方
- 中国の現地事情や観光地の裏側を知りたい方
- 批評的視点で「紅色旅遊」を楽しみたい方
まとめ
- 中国現代史の現場をユーモラスかつ批判的に体感できる一冊です。