- 近年の日本経済では「為替」「原材料」「人件費」などのコスト上昇を、企業が値上げによって吸収してきました。しかし、今後はその値上げが「売上減少」を招き、さらにその穴埋めのために追加の値上げをせざるを得ないという悪循環が生まれています。
- これは典型的なスタグフレーション(景気停滞下の物価上昇)です。景気が後退しても、コストプッシュ型のインフレが続くため、値下げは難しい状況です。
今後の見通しとポイント
- 値上げの連鎖
企業はコスト上昇分を価格に転嫁し続けるしかなく、消費者の購買力が低下することで売上が減少。その穴埋めのためにさらに値上げが続く、というスパイラルが予想されます。 - 値下げは困難
景気後退局面でも、コストそのものが下がらない限り、企業は値下げに踏み切りにくいです。特に原材料やエネルギー、人件費が高止まりしている限り、この傾向は続くでしょう。 - 消費者への影響
実質賃金が伸び悩む中での値上げは、生活防衛志向を強め、消費マインドを冷やす要因となります。 - 政策対応の難しさ
金融緩和で景気刺激を図ろうにも、インフレが進行しているため政策の選択肢が限られます。
まとめ
- 「スタグフレーション」の典型的な症状が現れています。今後もしばらくは値上げが続き、景気後退下でも物価が高止まりする状況が続く可能性が高いでしょう。企業も消費者も、厳しい環境への対応が求められる時代となっています。
- 日本におけるスタグフレーション(不況下のインフレ)リスクと、その影響から生活を守るための対処法を解説した書籍です。
主な内容とポイント
- スタグフレーションとは
賃金が上がらない一方で物価だけが上昇する現象で、可処分所得が減少し、生活が苦しくなる経済状況を指します。 - 日本特有のリスク
日本は過去30年にわたりデフレが続いてきましたが、2022年以降、円安やエネルギー・食料価格の高騰などの影響で、多くの商品が値上げされ、インフレ傾向が強まっています。不景気が続く中での物価上昇という「最悪の事態」に陥るリスクが高いと著者は指摘しています。 - 国民生活への影響
いったん制御不能なインフレが始まると、単なる節約では対応できず、国民生活に大きなダメージが及ぶと警告しています。
推奨される対策
- インフレ時に価値が上がる資産(不動産、電力・食品関連株など)を持つ
- サービス業など人件費率が高い業界の株はインフレに脆弱
- 金や資源などの現物資産も対策となるが、保管コストなどを考慮すると株式投資が有利
- 円安が続くと考えられるため、海外株式の保有も有効
- 仮想通貨はリスクが高いため慎重な対応が求められる
重要な姿勢
- 著者は「イメージや噂に惑わされず、事実をもとに適切に対処すること」が何より重要だと強調しています。
読者へのメッセージ
- 従来の「デフレ脱却=経済復活」という単純な見方を改め、スタグフレーションという複雑な経済危機にどう立ち向かうかを平易に解説しています。日本の現状と将来リスクを理解し、個人の生活防衛策を考えたい方におすすめの一冊です。