2025年10月29日 ロスネフチ独事業は制裁対象外、米政府が書面で確認=ライヒェ経済相
概要(2025年10月29日報道)
- ドイツのロベルト・ライヒェ経済・エネルギー相は、米トランプ政権がロシア石油大手ロスネフチ(Rosneft)に対して発動した新たな経済制裁について、ロスネフチのドイツ子会社は制裁対象外であると正式に確認されたと発表した。米政府から「コンフォートレター(保証書)」という形で通知を受け取った。
背景と内容
- トランプ政権はロシアの主要エネルギー企業を対象に追加制裁を実施。
- しかし、ロスネフチのドイツ事業(製油所など)は2022年以降、ドイツ政府の管理下に置かれており、燃料供給の安定に不可欠なインフラとして扱われている。
- ドイツ側は、制裁影響を避けるため米国に事前協議を行い、企業活動継続の保証を求めていた。
米政府の確認内容
- 米国側は、ドイツのロスネフチ事業がロシア本社から完全に分離されていると認定。
- このため、同事業と取引する企業・機関は米国の二次制裁を受けない。
- コンフォートレターの発行により、ドイツ側の不安は大きく緩和されたとライヒェ氏は述べた。
今後の見通し
- ドイツ政府は、恒久的な制裁除外措置を確立するため、米国との協議を継続中。
- ロスネフチのドイツ拠点には、シュヴェートなど国内の主要製油所が含まれるとみられる。
- エネルギー供給の安定性確保と、ロシア依存からの脱却を両立させることが課題となる。
この件は、ロシア制裁体制の柔軟運用を象徴する事例であり、ヨーロッパのエネルギー安全保障と米国の対露制裁政策のバランス調整が進んでいることを示しています。
2025年10月22日 米、ロスネフチとルクオイルを標的-最新の対ロシア制裁
2025年10月22日、アメリカはロシア最大級の石油会社ロスネフチ(Rosneft)とルクオイル(Lukoil)に対して厳格な制裁を発動しました。この措置は、ウクライナ侵攻に対するロシアの和平プロセスに対する真剣な取り組みが見られないことを背景に、ロシアのエネルギー部門を標的とし、クレムリンの戦争遂行能力および経済力を削ぐことを目的としています。米財務省はこれを「トランプ大統領就任以来最も厳しい措置」と表現し、同時に同盟国にも制裁の履行を呼びかけています。
ロスネフチは石油の探査、生産、精製、輸送、販売を行う垂直統合型企業であり、ルクオイルはロシアおよび国際的に石油・ガスの探査、生産、精製、販売に携わる企業で、両社合わせてロシアの原油輸出の約半分を占めています。制裁はこれらの企業と複数の関連子会社に及び、所有割合が50パーセント以上の子会社も資産凍結などの対象となります。
今回の制裁発動は、長らくロシアとの対話や交渉を模索していたトランプ大統領の政策転換を示すもので、同大統領は最近、無益な会談を避けるためにも圧力を強化すべきという見解に至ったと報じられています。これにより国際的な原油価格は上昇し、ロシア産油の供給不安が強まっています。
米財務長官のスコット・ベッセントは、「今こそ殺戮を止め、即時停戦すべき時だ」と述べ、ロシアのプーチン大統領がこの戦争を終わらせる意思を示さないことを強く批判し、さらなる措置も辞さない構えを示しています。
この制裁はロシアのエネルギー産業を狙った過去最大級の経済制裁であり、ウクライナ紛争の早期解決を促すための圧力を一段と強めるものです。
西側企業にはない包括的で国家主導的な体制が魅力
2025年10月10日 ロシア国営原子力企業が外国の大型案件を次々獲得 西側企業にはない強みとは
ロシアの国営原子力企業ロスアトムは以下の強みで外国の大型案件を次々獲得しています。
- ロスアトムは世界の核濃縮能力の約40〜46%を占め、ウランの濃縮や燃料供給、原子炉建設、運営、保守、使用済み燃料の管理まで一貫して行う体制を持っている。原子力に関わるサプライチェーン全体をカバーしている点が大きな強みである。
- 建設から運転、保守、廃棄物処理、融資まで含むワンストップサービスを提供し、技術が未熟な国でも原子力発電所建設を可能にしている。特に一括請負契約や規制整備の支援を行う「パッケージ型」サービスが競合にない特徴である。
- 政府の強力な支援に基づき、国庫からの優遇融資を提供。ウラジーミル・プーチン大統領の営業力も活用し、国営巨大企業の強みを生かしている。これにより資金面でも中国などと競争している。
- 世界各国に幅広い顧客を持ち、特に中国や中アジア(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス)、トルコ、エジプトなどで多数の原子炉受注と建設を進めている。国外受注残高は1400億ドル規模にも及ぶ。
- 米国や西側の原子力企業は資金調達や技術人材の面で一括請負体制を提供できず、ロスアトムのような国家支援の包括的なサービス体制に太刀打ちできていない。西側の制裁があっても原子力分野は対象外のケースが多く、競争力を維持している。
以上のように、ロスアトムの外国大型プロジェクト獲得の強みは、原子力の一貫サービス提供力、国家の強力な支援と融資体制、そして広範囲な国際展開にあります。西側企業にはない包括的かつ国家主導的な体制が競争優位となっています。
逆に言うとロシアには西側を凌駕する産業がない
ロシアの産業全体を見ると、エネルギー資源(石油、天然ガス)、原子力(ロスアトムの強み)、金属(鋼鉄、アルミニウム)などの資源関連産業が経済の大部分を占めています。製造業のGDP貢献度は主要国の中でも高いですが、電子部品や半導体など先端技術分野では西側や中国に後れを取っています。防衛産業や航空宇宙産業は国際競争力を持つ一方で、IT分野はニッチな技術があるものの、全体での技術革新や市場拡大は限定的です。また、産業構造は資源依存が強く、資源価格の変動による影響も大きい状況です。西側を凌駕する産業は多くなく、原子力を除くと全般的に国際競争力で限界が指摘されています。
つまり、ロシアには原子力分野のような特定の強みはあるものの、他の多くの先端産業や幅広い分野では西側諸国を凌駕する産業は少ないという状況と言えます。
2025年09月02日 使用済み核燃料は「宝の山」 AI時代の電力需要を支える再利用の道
米国ではAIの普及に伴う電力需要の急増と、核燃料供給におけるロシア依存が問題となっている。一方で、9万トンを超える使用済み核燃料が国内に蓄積し続けており、その処理が課題となっている。
スタートアップ企業Curioは、使用済み核燃料を再利用する新技術を開発して注目を集めている。同社の方法は、従来の硝酸を用いる危険な湿式処理ではなく、熱と電気化学反応を組み合わせた乾式処理である。これにより、ウランやプルトニウムを分離・再利用できるほか、ロジウムやパラジウムなどの貴金属、さらには医療や宇宙探査、産業利用に有用な放射性同位体を取り出せる。
この技術の利点は以下の通り:
- 使用済み燃料から再び燃料用のウラン・プルトニウムを取り出せる
- 米国の核燃料需要の最大3分の1を1施設で供給可能
- 世界需要の1割を満たすロジウムを供給できる可能性
- 廃棄物の危険な放射能期間を1万年から数百年に短縮できる
米国エネルギー省も支援しており、国立研究所で3年間の実証試験が進行中。計画が順調に進めば3〜5年以内に商業規模の施設が稼働する見込みだ。
この取り組みは、AIによる電力需要の増大と、核廃棄物処理問題という二つの課題を同時に解決し得ると期待されている。また、核廃棄物そのものを「資源」と捉え直す新たな視点を生み出し、エネルギー安全保障や戦略的優位性の確保にもつながる可能性がある。
日本はロシアに対し抗議
1993年、ロシア(当時はソ連崩壊後直後)の海軍によって、日本海のウラジオストク南東約200kmの海域に、原子力潜水艦から出た大量の放射性廃棄物(主に液体の低レベル核廃棄物)が内容や量を明かさず投棄されました。投入された廃棄物は900トン規模とされています。
このような投棄は、国際原子力機関(IAEA)やロンドン条約の規定、および海洋法に明確に違反する行為です。この事件は日本や韓国など、周辺国で大きな反発と不安、環境汚染への懸念を引き起こしました。
廃棄の背景には、ソ連崩壊後に極東の退役原潜が大量に放置されていたこと、ロシア側に安全に処理・解体する資金的余裕がなかったことがありました。この問題を受けて、日本もロシアに対し抗議し、後に国際的な核廃棄物海洋投棄の禁止に向けた規定強化の流れが生まれました。
その後、日本も国際協力の枠組みでロシアの退役原潜解体や核廃棄物処理に関与しましたが、ロシアのウクライナ侵攻以降、協力は中断されています。
この問題は、ロシアによる原潜由来の放射性廃棄物が日本近海に遺棄されていた事実として、今も国際社会の記憶と関心を引いています。
「稼ぐ小国」の戦略~世界で沈む日本が成功した6つの国に学べること~

- 人口1,000万人以下・天然資源の乏しい国々が世界トップレベルの一人あたりGDPを実現した理由を分析し、日本への教訓を示す書籍です。
本書で分析されている国:
- ルクセンブルク
- アイルランド
- スイス
- シンガポール
- アイスランド
- デンマーク
これらの国々は、
- 人口規模が小さい
- 資源に乏しい
- 大国の影響を受けやすい
などの共通点を持ちながらも、生産性・競争力・生活水準の面で世界上位となっています。
主な論点:
- 各国の政策的特徴や、経済運営の工夫
- なぜ小国でも成長できたのか、その戦略と実践
- 低迷する日本(2023年IMF統計で一人あたりGDP世界34位)が、先進的な小国から何を学ぶべきか
本書はデータと比較をもとに、厳しい状況下にある小国がいかに競争力を獲得しているかを検証し、今後の日本の成長戦略の参考となる示唆を提供しています。
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