日本企業 中国で苦戦続く 業績悪化と安全リスクに揺れる
2025年07月に中国日本商会が行った調査によると、中国に進出している日本企業は業績悪化と安全リスクの高まりに苦しんでいる。調査対象は約8000社のうち1434社から回答を得たもので、2025年前半の売上・利益・販売価格のいずれも悪化傾向が明確になった。
具体的には、売上が「減少」と答えた企業が48%に達し、前回調査から大幅増加。利益も47%が「減少」と回答した。商品やサービスの販売価格も下落傾向が強まっており、値下げ圧力が企業経営を圧迫している。企業環境に対する認識も「悪化した」とする回答が40%に増えた。
背景には、中国経済の減速、激しい価格競争がある。また、アステラス製薬社員拘束事件や日本人親子襲撃事件など、安全面での不安材料が広がっており、従業員やその家族の精神的負担が増している。
記事では、大手メーカーの元幹部が「中国で生きていて一番怖かった経験」を語ったことも紹介され、中国ビジネスのリスクが経済面にとどまらず治安や人身の安全にも及んでいる現状が浮き彫りになった。
まとめると、日本企業は中国で売上・利益・価格ともに下降傾向にあり、経営環境が悪化しているうえ、治安リスクによる従業員・家族の不安も深刻化している。
日本企業が今後取ると考えられる中国戦略の方向性
1. 投資・事業規模の見直し
- 調査では売上・利益の悪化が鮮明になっており、多くの企業が事業拡大よりも「縮小」「慎重化」にシフトすると考えられる。すでに一部企業は新規投資を控え、既存設備の稼働率調整や人員削減を検討している。
2. リスク分散(チャイナ・プラスワン)
- 中国一本依存は危険との意識が強まり、東南アジア(ベトナム、タイ、インドネシア)やインドなどに生産・販売拠点をシフトさせる動きが加速している。特に製造業では中国を“世界の工場”とする構図からの脱却を模索し始めている。
3. 安全保障リスク対応
- 従業員拘束や襲撃事件などの治安リスク問題に対応するために、
- 駐在員数を減らし、出張ベースに切り替える
- 家族帯同を制限する
- セキュリティ強化や現地情報収集力の向上
- といった企業リスクマネジメントを強化する必要に迫られている。
4. 中国市場向け戦略の再構築
- 依然として中国は巨大市場であり、完全撤退は現実的ではないため、
- 高付加価値品や現地ニーズに特化した商品展開
- 合弁やライセンス契約によるローカル化戦略
- デジタル販売チャネル(EC、SNS)を利用したコスト抑制
- といった形で「選択と集中」を進める動きが出ている。
5. 政治・外交動向への依存度
- 日中関係や米中対立の影響が直接的に企業活動に反映されるため、政治リスクを常に意識し、短期的には柔軟に動ける体制が求められている。
まとめると、今後の日本企業は「大規模な撤退」ではなく「縮小とリスク分散」を軸に、中国に深入りしすぎず、成長分野だけを取り込む戦略へ転換する可能性が高いと見られる。
中国のローソンの動きが激しくなっている。地方ではミニ店舗を展開
- 都市では大型化してスーパーの領域に進出しようとしている。課題は
中国のローソンは2025年までに地方には20平米のミニ店舗「ローソンミニステーション」を展開し、都市部では150〜200平米の大型化したスーパー型店舗を拡大する戦略を進めている。地方のミニ店舗は加盟費用約4万元(約80万円)で個人商店が転換しやすく、2500SKUの商品から地域に合わせてセレクト可能。都市部の大型店舗ではSKUを3500〜4000に増やし、生鮮食料品やイートインコーナーを強化している。この結果、売上や客単価、生鮮食品の販売率は向上しているが、サプライチェーンの強化が最大の課題となっている。生鮮食料品の物流体制がスーパー水準に達しておらず、商品ロス率の高さが利益に影響を与えているため、配送頻度増加や消費期限管理の改善が求められている。
また、中国全体で店舗数は2023年08月に6000店舗を突破し、2025年度には1万店舗達成を目指している。ローソンは地方展開の拡大とスーパー化を通じて、中国市場での競争力強化を図っており、国内系コンビニやサムズクラブの強力な競争圧力の中で差別化を進めている。一方で、サプライチェーンの大改造をどう進めるかが成功の鍵となり、今後の動向が注目されている。
これから中国に進出する日本企業
これから中国に進出する日本企業は約1万3,000社に上ると報告されていますが、2024年現在、中国の経済政策の変動や米中の政治・経済緊張、コロナ禍の影響で多くの企業が中国ビジネスの再編や撤退を進めており、慎重な対応が目立っています。ただし、沿岸部では減少傾向が見られる一方で内陸部では進出企業数が増加しています。
業種としては卸売・小売業が約4割を占め、製造業、IT・通信業、サービス業も多く進出しています。成功例としてはパソナ、良品計画、味千ラーメン、吉野家、サントリー、京セラ、パナソニックなどがあります。これら企業は中国の大規模な市場と発達したキャッシュレス決済、eコマースなどの環境を活用し、日本の技術力を生かした新製品やサービスを展開しています。
中国側の政策「中国製造2025」は製造業の高度化とイノベーションを目指しており、この計画と連動して中国企業と日本企業の提携が進む可能性もあります。特に半導体やハイテク分野を含む10の重点分野に関わる企業は中国進出を視野に入れる価値があります。
まとめると、中国市場の魅力と同時に「チャイナリスク」と呼ばれる政治経済の不確実性も存在し、進出企業は戦略的に新規参入や再編を検討している状況です。今後は大企業に加え、中小企業や新興企業による進出や中国企業との提携の動きが加速するとみられます。
今後、日本企業は中国市場についてどのような戦略を取る可能性が高いか
今後の日本企業の中国市場における戦略は、以下のような方向性が高いと考えられます。
- 事業ポートフォリオの戦略的見直しと高度化
日本企業はこれまでの「安価な製造拠点」という位置付けから、「中国を巨大な消費市場」として捉え直し、調達・生産・販売のバリューチェーン全体の構造転換を進めています。具体的には、付加価値の低い組立機能を東南アジアに移転しつつ、中国ではより高付加価値の製品開発や設計、販売に注力する動きが増えています。 - 「中国で作って中国で売る」戦略と非市場戦略の強化
かつての輸出中心の経営方針から、中国現地で消費者と直接向き合う「中国で作り、中国で売る」戦略への転換が進んでいます。このため、環境保護や社会貢献、地域社会への信頼獲得といった非市場戦略も重視され、中国社会における良き企業市民としての存在感を高めることが企業の持続的成長に不可欠とされます。 - 中国市場向けに特化した商品・サービス開発の強化
中国の消費者ニーズに合致した製品やサービスを提供し、現地市場の多様な要求に応えるための資源投入と迅速な意思決定が求められています。真のグローバル化や現地化が今後のカギです。 - 競争優位の確立と差別化戦略
中国市場での競争激化に対応して、単にコストリーダーシップを追わず、「差別化戦略」を中心に据え、市場や社会課題に対して共通価値を創出しながら競争優位を築く方向が示唆されています。 - リスク分散と生産拠点の多角化(チャイナプラスワン戦略)
地政学リスクやサプライチェーンの脆弱化を踏まえ、中国以外の市場・生産拠点を活用する動きも並行して進められるため、単一市場への過度な依存を避ける戦略が続きます。
これらの動きは、単に市場規模の魅力を追求するだけでなく、中国の政治・経済環境の変動や国際情勢の緊迫化を踏まえた柔軟かつ長期的な視点による戦略転換が必要であることを示しています。日本企業は付加価値の高い製品開発と地域社会との信頼関係構築に資源を集中しつつ、進出戦略を緻密に調整していくことが予想されます。
- 人口減少が進む日本で各業界や公共サービスが今後どう変わるかを具体的に描いた書籍です。講談社現代新書から2024年11月に刊行されたこの本は、「未来の年表」シリーズの続編的位置づけで、日本の人口減少による「消費量の縮小」と「労働力の減少」がもたらす様々な課題を詳細に説明しています。
主な内容は、人口減少が進むことで以下のような影響が予測されると述べています。
- 製造業では革新的なヒット商品が生まれにくくなる。
- 自動車産業は整備士不足で事故後の修理が困難に。
- 金融業界はIT人材不足によるトラブルが多発。
- 地方紙やローカルテレビ局が消滅の危機。
- 物流業界のドライバー不足で荷物の輸送が滞る。
- 農業生産地の変動(例えばみかんの主力産地が東北に移る)。
- 住宅業界では人口減少により新築住宅の販売が減少。
- 建設業は技術者不足でインフラ老朽化が放置される。
- 鉄道やバスなど公共交通機関の利用者減少。
- 水道料金やガス料金の上昇。
- 医療・介護分野における医師・看護師不足、医療サービスの低下。
- 行政サービスの職員不足による住民サービスの悪化。
- 教育現場でも教員不足や学校統合の進行。
さらに、このまま成長に固執するのではなく、「戦略的に縮む」べきであることを示し、そのための10のステップを提案しています。具体的には、事業の選別や付加価値の向上、労働生産性の向上などを通じて人口減少社会に適応するための戦略を解説しています。
内容は実例を交えて、製造業・自動車産業・金融・小売・物流・農業・住宅・建設・公共交通・医療・教育・行政など幅広い業界が網羅されており、人口減少による社会変動の全体像と現実的な対応策を示したものです。
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