アメリカはステーブルコインを通じてドルの国際的影響力を拡大 中国に対する脅威

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2025年10月18日 世界的投資ブームと投機の危険水域 その1

仮想通貨を中心とした世界的資産価格の高騰に対して、著者・林敬一氏が警鐘を鳴らす内容です。以下に要約します。

世界各地で株価・金・不動産・仮想通貨がいずれも上昇し、投資市場に楽観論が広がる中、著者は過熱した楽観に警告を発しています。
主題は「仮想通貨の危うさ」とその構造的リスクです。

  1. 仮想通貨の本質的欠陥
    仮想通貨は「誰かが買うから上がる」という期待だけで取引され、本源的価値(企業利益や配当の裏付け)が存在しない。したがって下落局面では連鎖的売りも容易に起こる。
  2. ステーブルコインとの対比
    政府・中央銀行が発行するステーブルコインは、国債や預金で裏付けされ安全性が高い。今後はこの系統だけが生き残る可能性がある。
  3. 市場規模の過大化
    世界の仮想通貨市場は約4兆ドル(約600兆円)に達し、ビットコインとイーサリアムで7〜8割を占める。日本株の時価総額に匹敵するほど巨大化しているのは異常と指摘。
  4. 取引所の不透明さ
    仮想通貨は1000以上の私設取引所で扱われており、取引の大半は取引所自身が売買の相手となる構造。規制が行き届かず、価格操作や不正が発生しやすい。
  5. 盗難・詐欺リスク
    北朝鮮によるハッキング、過去のマウントゴックス事件など、盗難・詐取の事例が後を絶たない。これも仮想通貨の構造的な脆弱性を示す。

結論

  • 仮想通貨は「賭場のサイコロ」にすぎず、実体的価値を持たないにもかかわらず莫大な市場を形成している。その危険性は、実質的に国家規模の経済を揺るがしかねないほど深刻。
    次回記事では「本源的価値とは何か」について掘り下げる予定としています。

 

 

2025年10月17日 ステーブルコインがドル強化 中国共産党は深く懸念​

米国のステーブルコイン制度化とデジタルドルの推進が、国際金融システムに大きな変化をもたらしています。トランプ政権下で進められたこの動きは、ドルの地位を強化し、世界中の取引や資金移動においてドルが中心的な役割を担う仕組みを促進しています。

中国もこれに対抗して人民元の国際化を狙い、クロスボーダー用の人民元ステーブルコインの導入を検討しています。香港や上海を拠点に規制やインフラ整備を進め、人民元と連動したステーブルコインの普及を目指していますが、依然として人民元の国際決済シェアは低いままです。​​

一方、米国のステーブルコインは従来の金融インフラを回避し、コスト削減や送金の迅速化を促進します。中国にとっては、これがドル化の波を引き起こし、自国の通貨主権に対する脅威と映っています。実際、パキスタンや新興市場では、ドル建てのデジタル資産による資産保存や送金が一般化しています。​

専門家は、これらの動きはドル覇権の再強化、すなわち「デジタル・ドル」のネットワーク効果を通じた支配を意味していると指摘しています。利用者が増えるほどドルシステムが強化され、米国は対外債務負担を拡大せずに資金の流れを支配し続ける仕組みだという見解もあります。​

全体として、米国はステーブルコインを通じてドルの国際的影響力を維持・拡大しつつ、対抗する形で中国も人民元の国際化を推進しています。これらの競争は、今後の世界の金融秩序や経済戦略に大きな影響を与えると考えられます。

 

 

2025年09月19日 ステーブルコインで米国債需要、外国依存から市場需要へ転換か?

  • この記事は、米国債市場においてステーブルコイン発行体の存在感が急拡大している現状を伝えている内容です。
  1. 米国債の役割
    米国債は「世界で最も安全な資産」とされ、ドルの基軸通貨地位の支えにもなっている。これまで中国など外国政府が大口保有者だったが、新たに民間のステーブルコイン発行者が台頭。
  2. テザー(Tether)の成長
    2014年に誕生したステーブルコインUSDTは、当初は暗号資産市場の補助的な存在だったが、現在では裏付け資産として巨額の米国債を保有。
    2025年第2四半期末時点での米国債保有は約1270億ドル(約18.8兆円)に達し、世界有数の米国債保有主体となった。
  3. 規制環境の変化(GENIUS法)
    従来、ステーブルコインは曖昧な州レベルや断片的な規制のもとで運営されていたが、米国で「GENIUS法」が成立し、明確な連邦規制が導入された。
    米ドルや米国債など高信用資産による1対1の裏付けを義務化
    月次での準備資産開示を義務化
    「認可済み決済ステーブルコイン発行者」という新たな免許制度を導入
  4. 影響と意義
    ステーブルコインは単なる暗号資産の枠を超え、米国金融システムの柱の一つに位置づけられつつある。
    外国資本への依存度を減らしつつ、ドルの国際的優位性を強化する新たな投資主体として米国債需要を支えている。
    民間イノベーションが米国金融政策と整合し、ドルのデジタル化と流動性強化を後押ししている。

この記事の趣旨は、米国が国家戦略として維持してきた「ドル支配」に、テザーなどステーブルコイン発行者が新しい形で参画・支援する存在に変わったことを強調している点です。

要するに、テザーは「暗号資産の一社」から「米国債の巨大投資主体」へ進化し、米国の金融政策とも結びつき始めたということです。

 

 

テザー(USDT)とは

テザー(USDT)は、香港のTether Limited社が開発・発行する法定通貨担保型の代表的なステーブルコインで、1 USDTは常に1米ドルと等価になるよう設計されています。これはTether社が発行するUSDTの総量と同等以上の米ドル現金や米国債などの準備資産を保有し、価格の安定を支えています。​

テザーは複数の主要ブロックチェーン(イーサリアム、ポリゴン、Tronなど)上で発行されており、多様なプラットフォームで利用可能なため流動性が高いのが特徴です。また、暗号資産市場ではビットコインなど価格が変動しやすい資産からの逃避先として安全資産的な役割を果たし、取引所の売買ペアとしても広く利用されています。​

2025年時点でUSDTは時価総額で仮想通貨第3位を維持し、ステーブルコイン市場全体のシェアは60%以上を占める最大手で、スイスのルガーノ市など一部地域では事実上の法定通貨としても認められています。ただし、準備資産の透明性や監査に関する懸念もあり、今後の規制動向に注意が必要です。​

テザーは価格安定性により、暗号資産の決済手段や国際送金、新しい金融サービスの基盤として広く使われていますが、利用時には信用リスクや規制対応を理解することが重要です。

 

 

ステーブルコインとは

ステーブルコインとは、法定通貨や貴金属などの実物資産の価格と連動するよう設計された暗号資産(仮想通貨)です。価格の急激な変動を避け、実用的な決済手段として使いやすくする目的で作られています。価格安定の仕組みには主に4種類あり、米ドルなどの法定通貨を担保にする「法定通貨担保型」、暗号資産を担保にする「暗号資産担保型」、金などの商品価格に連動する「コモディティ型」、そして流通量を調整する「無担保型」です。

日本では2023年の法改正により、法定通貨などと連動するデジタルマネー類似型ステーブルコインが電子決済手段として法的に認められました。主に価格安定性から、暗号資産の値動きの激しさを回避し、国際送金やブロックチェーン上の決済手段としての利便性が高いことが特徴です。代表的なステーブルコインには米ドルに連動するUSDT(テザー)やUSDCがあり、2025年時点で仮想通貨市場でも上位に位置しています。

ステーブルコインがもたらすメリットは、価格変動の少なさにより支払い手段として使いやすいこと、国境を超えた迅速な送金が可能なこと、そしてブロックチェーン技術を活用した新たな金融サービス基盤になることです。ただし担保資産の信用問題や規制動向にも注意が必要です。

 

 

2025年07月14日 中国を利するトランプ、関税と予測不能な言動が「人民元を再び偉大に」する

トランプ前大統領の関税政策と予測不能な言動は、結果的に中国・習近平政権が目指す「人民元の基軸通貨化」を後押しする形となっています。以下、その背景と影響を整理します。

  1. 人民元国際化の推進
    習近平体制は2013年以降、人民元の国際化を最優先課題とし、2016年には人民元をIMFのSDR通貨バスケットに加えることに成功しました。
  2. トランプ政権の関税・政策混乱
    第1次トランプ政権(2017~21年)は、ドルに逆風が吹きましたが、当時は政権内に一定のブレーキが存在していました。しかし、第2次トランプ政権ではその「ガードレール」がほとんどなくなり、FRB議長の解任圧力や、予測不能な関税政策が強まっています。
  3. 包括的「相互関税」とドルの地位低下
    トランプ氏が敵味方を問わず脅しをかける「相互関税」政策は、世界の基軸通貨としてのドルの役割を縮小させる新たな一歩と見なされています。英エノド・エコノミクスのチーフ・エコノミスト、ダイアナ・チョイレバは「トランプの予測不能な言動と中国など他国のドル離れの動きが衝突し、ドルの準備通貨としての地位は低下しつつある」と指摘しています。
  4. 金融市場の混乱と人民元への追い風
    2025年春、トランプ関税によるインフレ懸念で米国債市場が混乱し、利回りが急上昇。これが世界の金融市場に波及し、ドルへの信頼が大きく損なわれました。この混乱が、中国による「人民元を軸にした独立した金融圏構築」の試みに弾みをつけています。
  5. デジタル通貨・ステーブルコインの台頭
    デジタル通貨や国際決済アプリなどの普及も、従来の基軸通貨としてのドルの地位を侵食しています。
  6. 人民元安政策の意図
    トランプ政権の関税強化に対し、中国人民銀行は人民元安を容認し、対米輸出の減少を他国向け輸出で補おうとしています。米中間の高関税合戦の中、人民元はユーロや円に対しても安くなり、中国製品の競争力を維持しようとする動きが見られます。
  7. 米国の信用格付け低下
    一貫性のない財政政策の結果、米国はAAA(トリプルA)の信用格付けをすべて失い、ドルの信認低下に拍車をかけています。

まとめると、トランプ氏の関税政策と予測不能な言動が、ドルの基軸通貨としての信頼を揺るがし、中国の人民元国際化や金融圏拡大の動きを加速させる「理想的な引き立て役」となっている、というのが各種専門家の分析です。

 

 

人々の暮らしぶりから考える 中国経済はどこまで独特か?
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中国経済の独自性を「官(政府)」と「民(市場)」のせめぎ合いという視点から、現地の人々のリアルな生活や語りを通じて解説した書籍です。

  • 本書の特徴は、ニュースや統計だけでは見えにくい中国一般市民の日常や実感を出発点に、経済の発展メカニズム、格差、環境、人口問題などを具体的に描き出している点にあります。例えば、北京で退職後を過ごす高齢者や、農村出身の男性、共産党員など、実際にいそうな人物像をインタビュー形式で描写し、彼らの人生や経済活動から中国経済の本質に迫っています。
  • 中国経済は「社会主義市場経済」を標榜し、1970年代末の改革開放以降、市場経済的な側面も強めてきましたが、依然として共産党一党独裁体制のもとで国有企業の影響力が大きく、政府(官)が経済を強くコントロールするという特徴があります。その一方で、市場(民)はより自由な経済活動を求めており、両者の間で絶えず緊張やせめぎ合いが続いています。
  • また、著者は経済学の理論や知見を用いて中国経済を「等身大」で捉え、過大評価や過小評価を避けて客観的に分析することの重要性を強調しています。例えば、都市と農村の格差についても、単なる印象論ではなく、場所や教育などの要因を経済学的に解説し、日本との比較も交えて理解を深めています。

まとめると、本書は

  • 官と民のせめぎ合いという中国経済の根本的な構造
  • 人々のリアルな暮らしを通じた経済の実態
  • 経済学的な視点による客観的な比較・分析

を特徴とし、中国経済の独特さと普遍性の両面をバランスよく描き出しています。

  • このアプローチにより、単なる「独裁国家」「格差社会」といった表層的なイメージを超え、中国経済のリアルな姿とその独自性を理解するための「入口のドア」を開く一冊となっています。

 

 

 

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