トランプ氏の政策が「中国人民元の国際化や金融圏拡大」を後押し

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中国を利するトランプ、関税と予測不能な言動が「人民元を再び偉大に」する

トランプ前大統領の関税政策と予測不能な言動は、結果的に中国・習近平政権が目指す「人民元の基軸通貨化」を後押しする形となっています。以下、その背景と影響を整理します。

  1. 人民元国際化の推進
    習近平体制は2013年以降、人民元の国際化を最優先課題とし、2016年には人民元をIMFのSDR通貨バスケットに加えることに成功しました。
  2. トランプ政権の関税・政策混乱
    第1次トランプ政権(2017~21年)は、ドルに逆風が吹きましたが、当時は政権内に一定のブレーキが存在していました。しかし、第2次トランプ政権ではその「ガードレール」がほとんどなくなり、FRB議長の解任圧力や、予測不能な関税政策が強まっています。
  3. 包括的「相互関税」とドルの地位低下
    トランプ氏が敵味方を問わず脅しをかける「相互関税」政策は、世界の基軸通貨としてのドルの役割を縮小させる新たな一歩と見なされています。英エノド・エコノミクスのチーフ・エコノミスト、ダイアナ・チョイレバは「トランプの予測不能な言動と中国など他国のドル離れの動きが衝突し、ドルの準備通貨としての地位は低下しつつある」と指摘しています。
  4. 金融市場の混乱と人民元への追い風
    2025年春、トランプ関税によるインフレ懸念で米国債市場が混乱し、利回りが急上昇。これが世界の金融市場に波及し、ドルへの信頼が大きく損なわれました。この混乱が、中国による「人民元を軸にした独立した金融圏構築」の試みに弾みをつけています。
  5. デジタル通貨・ステーブルコインの台頭
    デジタル通貨や国際決済アプリなどの普及も、従来の基軸通貨としてのドルの地位を侵食しています。
  6. 人民元安政策の意図
    トランプ政権の関税強化に対し、中国人民銀行は人民元安を容認し、対米輸出の減少を他国向け輸出で補おうとしています。米中間の高関税合戦の中、人民元はユーロや円に対しても安くなり、中国製品の競争力を維持しようとする動きが見られます。
  7. 米国の信用格付け低下
    一貫性のない財政政策の結果、米国はAAA(トリプルA)の信用格付けをすべて失い、ドルの信認低下に拍車をかけています。

まとめると、トランプ氏の関税政策と予測不能な言動が、ドルの基軸通貨としての信頼を揺るがし、中国の人民元国際化や金融圏拡大の動きを加速させる「理想的な引き立て役」となっている、というのが各種専門家の分析です。

 

 

人々の暮らしぶりから考える 中国経済はどこまで独特か?
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中国経済の独自性を「官(政府)」と「民(市場)」のせめぎ合いという視点から、現地の人々のリアルな生活や語りを通じて解説した書籍です。

  • 本書の特徴は、ニュースや統計だけでは見えにくい中国一般市民の日常や実感を出発点に、経済の発展メカニズム、格差、環境、人口問題などを具体的に描き出している点にあります。例えば、北京で退職後を過ごす高齢者や、農村出身の男性、共産党員など、実際にいそうな人物像をインタビュー形式で描写し、彼らの人生や経済活動から中国経済の本質に迫っています。
  • 中国経済は「社会主義市場経済」を標榜し、1970年代末の改革開放以降、市場経済的な側面も強めてきましたが、依然として共産党一党独裁体制のもとで国有企業の影響力が大きく、政府(官)が経済を強くコントロールするという特徴があります。その一方で、市場(民)はより自由な経済活動を求めており、両者の間で絶えず緊張やせめぎ合いが続いています。
  • また、著者は経済学の理論や知見を用いて中国経済を「等身大」で捉え、過大評価や過小評価を避けて客観的に分析することの重要性を強調しています。例えば、都市と農村の格差についても、単なる印象論ではなく、場所や教育などの要因を経済学的に解説し、日本との比較も交えて理解を深めています。

まとめると、本書は

  • 官と民のせめぎ合いという中国経済の根本的な構造
  • 人々のリアルな暮らしを通じた経済の実態
  • 経済学的な視点による客観的な比較・分析

を特徴とし、中国経済の独特さと普遍性の両面をバランスよく描き出しています。

  • このアプローチにより、単なる「独裁国家」「格差社会」といった表層的なイメージを超え、中国経済のリアルな姿とその独自性を理解するための「入口のドア」を開く一冊となっています。

 

 

 

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