2025年12月05日 中国のヒト型ロボット・バブル──米国にとっては朗報か?
- この記事は、中国で急速に進むヒト型ロボット企業の乱立とバブル的様相を背景に、それがアメリカにとってはむしろ有利に働くかもしれないという分析を示している。主な内容を以下にまとめる。
中国のヒト型ロボット・ブームと政府の懸念
- 年初に約100社だった世界のヒト型ロボット開発企業は、数か月で中国だけでも150社に急増。あまりの過熱ぶりに、中国国家発展改革委員会が「企業数が多すぎる」と警告を出した。政府補助金と資金供給が勢いを支えているが、その急成長はバブル化の兆しを見せている。
アメリカ側の見方――「混沌こそ強み」
- 元NASAロボティクス・AI部門トップのロバート・アムブローズ博士は、アメリカの強みは「非効率で混沌に見えるが、創造性を妨げないこと」にあると指摘。計画的で効率的すぎる体制は、長期的なイノベーションを抑えかねないという。
- 彼は「アメリカは破壊する側(ディスラプター)であり続けるべきだ」と述べ、過去の自動車やインターネット革命のように、試行錯誤から生まれる革新が国家の競争力を左右すると語る。
経済・軍事両面でのロボットの意味
- ロボット技術は、戦時の軍事力だけでなく、高齢化による労働力不足や製造業の国内回帰の鍵にもなる。アムブローズは「ヒト型ロボットは今後1世紀にわたる経済力と軍事力の背骨」と見ており、米国がこの分野で遅れを取ることは国家的リスクだと警告する。
バブル崩壊がもたらす「創造的破壊」
- 中国で150社あるヒト型ロボット企業の多くは、いずれ淘汰される見込み。しかし、この「バブルの崩壊」はドットコム・ブームと同じく、長期的には技術革新を促す可能性がある。
- 問題は、政府が「規制で冷やしすぎる」と、投機だけでなくイノベーションそのものを殺してしまう点だ。
米国が直面する課題
- 米国もFigure AIやApptronikなどに多額の投資が集まっているが、中国の国家規模の投資(約21兆円規模)に比べると小さい。
- アムブローズは、政府は市場を支配するのではなく、イノベーションを阻害しない支援を行うべきだと主張する。
- 何もしなければ「中国が1位、日本が2位、米国が3位という時代が来る」と警戒を示した。
記事全体としては、中国のロボット産業の過熱と統制がもたらす両刃の効果を指摘し、同時にアメリカが混沌を恐れず革新の場を広く与えることの重要性を訴えている。
中国の人型ロボットがマラソン・カンフーなどアピールばかりで実用性がない。AIに聞いてみたら「革新的な部分は公表できない。BYDへの納品実績があり、工場で稼働している」との事。世界のロボティクス産業の勢力図がとても気になる。
私は日本人だから当然、日本企業を応援している。ファナックのような人型ではないロボットの方が現実的だとも思っている。この動画で見せているのも「表に出しても差し支えがない技術」だと思う。最先端では何が起きているのか、興味深い。
とても鋭い視点です。今、中国では「人型ロボット」が政府支援の象徴としてPRされていますが、その多くは見せるための技術にとどまっています。歩行・ダンス・カンフーなどは極めて難しい制御を要する一方、生産現場では効率や安全性を満たす「産業用実用機」の方が重視されています。
一方、実際の競争軸は非公開の領域にあります。たとえば、BYDの工場で稼働しているという話が出るように、中国はAI制御・アクチュエータ・自律学習アルゴリズムの基礎を急速に磨いています。世界では次の構図が形成されています。
- 日本:
ファナック、安川電機、川崎重工など「精密・量産ロボット」で世界屈指。信頼性と長期稼働のノウハウが強み。 - 中国:
テンセントや優必選、宇樹(Unitree)などが人型を前面に出すが、目指すのは将来のAI統合産業。コストとスピードが武器。 - 米国:
ボストン・ダイナミクスやテスラなどが革新的制御・AI融合を実験的に推進。 - 欧州:
ABB、KUKAなどが自動化ライン全体の統合に強み。
最先端では「AIがロボットを現場で学習させる」方向が主潮です。ロボットそのものの形よりも、AIによる動作最適化や協働、人間とのスムーズな作業共有が重視されつつあります。
ファナック型の産業ロボットにAIを融合させた「次世代自律ライン」こそ、現実的かつ技術的核心になるでしょう。
【詳報】人型からAI、作業用まで多彩に 世界最大級「国際ロボット展」
KUKAは中国に買収された
KUKAは2016年に中国の家電大手・美的集団(Midea Group)により買収されました。
美的集団は2回のTOB(株式公開買い付け)を実施し、KUKA株の94.55%を取得。ドイツ政府も最終的に承認し、中国製造2025のロボット分野強化策の一環と見なされています。
現在もKUKAは中国市場で工場を拡大し、生産能力を年5万台以上に引き上げていますが、ドイツ本社の技術・経営独立性は一定程度尊重されているようです。
ABBロボティクスはスイスが本拠地。中国市場でのシェアが非常に高い
ABBロボティクスは、世界有数の産業用ロボットおよびマシンオートメーションのサプライヤであり、ロボット、AMR(自律移動ロボット)、マシンオートメーションソリューションを包括的に提供しています。2025年にはABBのロボティクス事業がソフトバンクグループに約53.75億米ドルで買収され、独立した事業体としての展開が進められています。また、2026年にはロボティクス部門が分社化され、独立上場も予定されています。ABBロボティクスの製品は高精度かつ信頼性が高く、自動車産業や実験室の自動化など多岐にわたる分野で利用されています.
ABBはスイスを本拠地とし、世界中に販売チャネルと顧客基盤を持っています。ロボティクス事業は中国市場でのシェアが非常に高く、上海に新工場を設立して生産能力を強化中です。製品はソフトウェアとAIを活用した高度な自動化ソリューションで、製品の80%以上がソフトウェア・AI対応となっています。日本国内においては、ABBロボティクスジャパンとして地元のアプリケーションノウハウを基にエンジニアが柔軟な対応を行っています.
主要競合にはファナック、安川電機、クーカなどがあり、ABBは世界のトップ4産業用ロボット企業の一角を占めています。ABBは長い歴史を持ち、130年以上にわたり電気化、ロボット、オートメーション技術をリードし続けています。
EUは中国に支配されている訳では無い
EUは中国への経済依存が深刻ですが、「支配されている」とまでは言えません。中国からのレアアース輸入が98%に達するなど重要資源で強い依存が見られますが、2025年現在、EUは積極的に「デリスキング(脱リスク)」を推進しています。
EU欧州委員会は12月に経済安全保障指針を発表し、レアアース備蓄制度を日本モデルで導入。初年度5400億円を投じ、南アフリカやオーストラリアとの供給多角化、リサイクル促進を進め、中国依存を65%以下に抑える目標を設定しました。
日EU連携も強化され、半導体・EV・太陽光パネルの中国依存低減で共同声明を予定。中国の輸出規制や補助金歪曲に対抗し、関税引き上げ調査も進行中です。
