2025年10月07日 日本酒が苦境…背景には長引く令和の米騒動 酒米から食用米へと転作する農家も 作付面積は直近1年で15%減少 価格差も顕著
- 日本酒業界は、長引く令和の米騒動による酒米高騰と作付面積減少で深刻な打撃を受けている。酒米の価格は食用米以上に上昇し、経営を圧迫、蔵元は値上げを避けられない状況だ。
酒米価格の急騰
- 静岡産「令和誉富士」は2024年に60kgあたり約1万7000円(前年比約20%増)だったが、2025年は3万円超に高騰予定。
- 一部では前年より100%以上の値上げも発生。
- 原料価格上昇が商品価格転嫁に直結し、市場価格との乖離への懸念が強まっている。
作付面積減少の要因
- 食用米コシヒカリの価格が酒米を上回り、収益性の高い食用米への転作農家が増加。
- 静岡県内の酒米作付面積は1年間で約15%減少。
- 農家からは「酒米は利益が低く、経営的に不利」との声が上がっている。
現場の声
- 八木青空農場の農家は「酒米は価格が安いとやりづらく、普通米の方が有利」と発言。
- 米価格の急変動を防ぐ安定した流通制度の構築を求めている。
行政の支援策
- 静岡県議会は静岡産酒米購入補助として約1000万円の予算案を計上。
- 製造現場からは、特定酒米だけでなく掛米や加工米も対象に支援拡大を求める声あり。
現状では米価の不安定さが続く中、地域の酒造りを維持できるかどうかが大きな課題となっている。
2025年10月04日 「過去記憶がない」酒米価格2倍超で危機!日本の伝統的酒造りが岐路に JA介さず直接コメ仕入れる契約を決断、老舗酒蔵が挑む新たな取り組み 岩手県
酒米価格高騰の背景
- 2024年にユネスコ無形文化遺産に登録された日本の伝統的酒造りだが、原料となる酒米の価格が過去に例のないほど高騰している。酒米「吟ぎんが」は60kg当たり約3万1000円と、2年前の2倍以上。主食用米の価格上昇や栽培の難しさから生産農家が減少し、「業界では国難」とまで言われる状況となっている。
新たな取り組み:農家との直接契約
- 吾妻嶺酒造店では、JAを介さず地元農家と直接契約を結び、コメを仕入れる新しい方式を導入。紫波町の農家・佐藤和典氏との契約により、主食用米「ひとめぼれ」の一部を酒造り用として提供してもらい、価格を約2割抑えることに成功している。双方に安定した取引が生まれ、コスト面の安心感が芽生えている。
循環型農業への挑戦
- もう一つの挑戦が、岩手県立農業大学校との「循環型農業」だ。酒造工程で出る酒かすを大学校で飼育する牛のえさに利用し、その牛のふんを堆肥にして酒米「ぎんおとめ」を栽培するという仕組み。学生たちの協力で、猛暑や渇水にもかかわらず良質な稲が実り、2026年2月に完成予定の純米酒へとつながる。
伝統と未来をつなぐ模索
- 十三代蔵元の佐藤元氏は「過去記憶がないほどの原料高だが、逆に前向きな挑戦の時期」と語る。地元との連携による安定供給と、教育機関との協働が、伝統的酒造りの持続可能な形を見出す鍵となっている。高騰する酒米市場の中でも、地方酒蔵が自立的に未来を切り拓こうとする姿を示した内容である。
日本の酒造業は国の補助金に頼っている
現在の日本の酒造業者は経営の改善や新商品開発、販路拡大、海外展開などのために国や地方自治体からの補助金を積極的に活用しています。これらの補助金は返済不要で、設備投資や新しい事業展開のための資金支援に使われ、酒蔵の経営立て直しや廃業回避にも役立っています。
主な補助金の種類には、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金、酒類業振興支援事業費補助金、日本産酒類海外展開支援事業費補助金、観光庁関連の補助金などがあります。これらは生産プロセスの効率化、新商品の開発、海外市場向けの輸出拡大、観光と連携した酒蔵ツーリズム推進など多様な目的で利用されています。
補助金申請には事業計画や売上・賃金の増加目標などの条件があり、採択されると50万円から最大で1000万円以上の支援を受けられる場合もあります。複数の酒造業者が連携して取り組むケースでは上限額がさらに高くなることもあります。実際に補助金を活用し、新商品の開発や設備の近代化を進める酒造も増えています。