水素を中国共産党に掌握させるべからず
中国共産党による水素サプライチェーン掌握の現状
- 中国共産党(中共)は、次世代エネルギー分野である水素のサプライチェーンを掌握するため、国家戦略として大規模かつ組織的な投資・政策を進めています。2024年にはクリーンエネルギー分野だけで約6,800億ドルを投資し、その規模は米国とEUの合計に匹敵します。2020年時点で世界全体の10%未満だった中国の水素関連製造能力は、2025年には60%以上に急拡大していると報じられています。
中国の水素産業戦略と目標
- 中国政府は「水素エネルギー産業発展中長期計画(2021~2035年)」を策定し、水素を将来の国家エネルギー体系の重要な一部と位置づけています。この計画では、2025年までに再生可能エネルギー由来の水素生産量を年間10万~20万トンとする目標や、燃料電池車5万台、1,168カ所の水素ステーション設置など、具体的な数値目標が設定されています。また、産業の集積やインフラ構築を中央集権的に進め、無秩序な競争を避けつつ、全国規模で統一的な発展を図っています。
グローバルな覇権争いと米国・日本への示唆
- 中国の水素分野での急成長は、アメリカや日本、EUにとって大きな懸念材料です。水素はエネルギー貯蔵・輸送・多用途利用が可能な戦略資源であり、サプライチェーンの主導権を中国に握られることは、経済安全保障上のリスクとなります。米国ではクリーン水素製造に対する税額控除(内国歳入法45V条)などの政策を通じて、国内投資や雇用創出、輸出拡大を図ることが急務とされています。
今後の展望と課題
- 中国の水素産業は、政府主導の明確な戦略と巨額投資により、サプライチェーンの上流から下流までを急速に掌握しつつあります。このままでは、グローバルな水素経済の主導権が中国に集中し、他国が中国のサプライチェーンに依存するリスクが現実のものとなります。
「今こそ、その瞬間だ。躊躇すれば、単に後れを取るだけでなく、21世紀における最も重要なエネルギー市場のひとつから締め出され、エネルギーが『力』を意味する時代において、海外のサプライチェーンに依存せざるを得なくなる。」
結論
- 水素はエネルギー安全保障と産業競争力の要となる資源です。中国共産党によるサプライチェーンの掌握が進む中、日米欧は独自の技術開発・投資・政策強化によって、水素分野での自立性と国際競争力を維持・強化することが不可欠です。
水素自動車が普及しない理由
価格の高さ
- 水素自動車(燃料電池車)はガソリン車やハイブリッド車に比べて新車価格が高く、例えばトヨタのMIRAIは700万~800万円と、一般的なガソリン車やハイブリッド車よりもかなり高額です。
水素ステーションなどインフラの未整備
- 日本国内の水素ステーションは2024年時点で約154~160カ所しかなく、都市部に偏在しており、存在しない県もあります。設置コストもガソリンスタンドの約10倍と高額で、インフラ整備が進みにくい状況です。
燃料や車両のコストが高い
- 水素の製造、運搬、貯蔵、車両の高圧タンクや燃料電池の製造には高いコストがかかります。特に「グリーン水素」(再生可能エネルギー由来)の製造コストは依然として高価です。
エネルギー効率の低さ
- 水素を作るためには大量の電力が必要で、その電気を使い水素を製造・運搬し、さらに燃料電池で電気に戻すという複数の変換過程があり、全体のエネルギー効率が低いと指摘されています。
技術的・安全性の課題
- 高圧水素タンクの製造や安全性の確保には高度な技術が必要で、消費者の間には安全性への不安や誤解も残っています。
EV(電気自動車)との競争での遅れ
- 世界的にEVの販売台数が急増する中、水素自動車の販売は伸び悩んでいます。2023年にはEVが1,000万台以上売れたのに対し、燃料電池車はわずか約1万4,000台と、圧倒的な差がついています。
まとめ
- 水素自動車が普及しない理由は「車両や燃料の高コスト」「水素ステーションの不足」「エネルギー効率の低さ」「技術的・安全性の課題」など複合的です。加えて、EVの普及が急速に進んでいることも、水素自動車の普及を妨げる大きな要因となっています。