人工光合成
植物の光合成の仕組みを人工的に再現し、太陽光エネルギーを使って水や二酸化炭素から水素や有機化合物などの化学エネルギーを合成する技術です。天然の光合成が水とCO2から酸素と糖を作るのに対し、人工光合成は道具や触媒を使ってそれらの反応を行います。主な目的は化石燃料の代替や温室効果ガス削減による地球温暖化対策であり、太陽光から直接エネルギーを化学形態で蓄えることが可能です。
人工光合成の研究は1970年代から始まり、2001年には可視光利用の水分解技術が世界で初めて発表されました。現在は高効率な水分解による水素生成やCO2還元による有機物合成を中心に進展しており、2021年にはエネルギー変換効率が10%台に達したという報告もあります。光触媒や光電極の開発が進み、商用化に向けて耐久性向上やコスト低減が進められています。
具体的なプロセスとしては、光触媒によって水を水素と酸素に分解し、その水素や還元されたCO2を使って燃料や化学品を合成する流れです。これにより二酸化炭素を排出せずにエネルギーを作り出せるため、脱炭素化やカーボンニュートラルの実現に役立つと期待されています。
日本では産業利用や実用化を目指した研究が活発に行われており、環境省なども人工光合成技術の早期実用化のために資金投入を進めています。人工光合成は太陽電池やバイオマス、太陽熱利用と並ぶ「第4の太陽エネルギー活用法」と位置づけられています。
現時点で人工光合成よりソーラーパネルの方が効率は高い
ソーラーパネル(太陽電池)と人工光合成の効率は現時点でソーラーパネルの方が高い。一般的な太陽電池の光電変換効率は約20%であり、水の電気分解効率(40〜60%)を掛け合わせると、太陽光から水素を得る際の総合効率は約10%程度となる。一方、人工光合成のエネルギー変換効率は研究開発の進展により7%前後、最高では10%を目指しているものの、実用的な規模での普及にはまだ課題が残っている。
つまり、現状ではソーラーパネルで発電して電気分解を行い水素を生成する方式の方が効率は良く、安定的な電力供給も可能である。一方で、人工光合成は二酸化炭素の削減や燃料の直接生成といったメリットを持ち、効率向上やコスト削減が進めば将来的に競争力のある技術になると期待されている。
バイオエタノールの原料と食料生産が競合し、食料価格の上昇や森林破壊の原因
バイオエタノールを燃料として使うことにはいくつかの利点がある。まず、再生可能な植物資源から作られるためエネルギー資源の枯渇リスクがなく、持続可能なエネルギー供給が可能である。次に、燃焼しても植物が成長過程で吸収したCO2の再放出に過ぎず、温室効果ガスの削減に貢献するカーボンニュートラルな燃料とされている。さらに、エタノールはガソリンに比べてオクタン価が高く、エンジンのノッキングを防ぎ効率的で安定した燃焼ができるというメリットもある。
ただし、デメリットとしては、バイオエタノールの原料であるトウモロコシやサトウキビなどの作物と食料生産が競合し、食料価格の上昇や森林破壊の原因となる可能性があることが挙げられる。また、日本では国内産バイオエタノールの生産がまだ十分でなく、多くが輸入に依存しているため、エネルギー安全保障の面で課題も残る。
総合的に見ると、バイオエタノールは化石燃料の代替燃料として環境負荷を下げる効果が期待できるが、持続可能な利用のためには生産方法や原料の確保に注意が必要である。
太陽光発電で余った電気は、揚水発電のための水の揚水に
太陽光発電で余った電気は、揚水発電のための水の揚水に使われることが増えています。揚水発電は、低い位置の水を高い位置に汲み上げておき、需要が高まったときにその水を落として発電する仕組みで、大規模な蓄電池のような役割を担います。この組み合わせにより、太陽光発電のように発電量が不安定な再生可能エネルギーの欠点を補い、電力の安定供給と効率化が進んでいます。
揚水発電の特徴
- 電気を貯めることができないため、余った電気を使って水を高い位置へくみ上げることでエネルギーを蓄え、必要時に発電する形で利用される。
- 発電効率は約70%程度で、発電コストが比較的安いため経済的にも有利。
- 昼間の太陽光で余った電気を利用して揚水し、需要の多い夜間やピーク時に発電する逆転現象も生じている。
太陽光発電との連携効果
- 太陽光発電は天候や時間で出力量が変動しやすいが、揚水発電で余剰電力を蓄えることで変動を吸収できる。
- 揚水発電の水をくみ上げる作業が大規模な蓄電池の代わりとなり、電力の需給バランス調整に寄与。
- これにより再生可能エネルギーの導入拡大とともに電力システムの安定化が可能になる。
このように、太陽光発電で余った電力を揚水発電に利用することで、エネルギーの無駄を減らし、効率的な電力利用と供給の安定を支える重要な技術となっています。
揚水発電の代わりに重力発電があるが、デメリットが大きい
揚水発電の代わりに重りを巻き上げて高所から落として発電する仕組みは「重力発電」と呼ばれます。これは揚水発電と基本原理は同じで、位置エネルギーを使うものです。水のかわりにコンクリートブロックなどの重りを吊り上げて高い位置に持ち上げ、需要の高いときにその重りを落として運動エネルギーを回転機などで電気に変換します。
重力発電の特徴として、水資源に依存せずに設置できるため場所を選びにくいことと、装置が比較的シンプルで低コストで導入可能なことが挙げられます。実際にイギリスのGravitricity社は廃坑に重りを吊るして利用する重力発電システムを開発し、イギリスや南アフリカなどで実証実験が進んでいます。また、日本の企業も山間部の高低差を活かした重力蓄電システムを研究しています。
重りの重さと巻き上げる高さによって蓄えられるエネルギー量が決まり、例えば10トンの重りを100メートル持ち上げると理論的に約2.7kWhのエネルギーを蓄えられます。発電は巻き上げた重りを落とす際の力を利用し、応答速度も速いのが特徴です。
つまり、重りを巻き上げて高所から落として発電する重力発電は、揚水発電と同じ原理を持ちながらも水資源が不要で、様々な場所での設置が可能な再生可能エネルギーの蓄電技術として注目されています.
「電気」とは何か、その仕組みや日常生活でどのように利用されているかについて、物理学の観点からわかりやすく解説しています。数式も交えながら、専門用語や原理も丁寧に説明されているため、物理の基礎知識から実用まで幅広く学ぶことができます。特に、電気を生み出す「発電」の仕組みや種類についても、基礎から丁寧に解説されているのが特徴です。
本書は、エジソンによる白熱電球の実用化(1879年)や世界初の商用発電所(1882年)など、歴史的背景から現代の電気インフラの重要性まで、幅広い内容をカバーしています。毎日の暮らしで「当たり前」に使っている電気の本質や今後のエネルギー問題にも触れ、興味・関心を持つ読者が基礎知識を体系的に身につけられる内容です。
物理や電気・発電の入門書として、学生や大人、科学好きな方まで幅広い層におすすめできる一冊です。
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