各国が厳格な軍事的・法的拘束を望まなかった
- ブダペスト覚書は、明確な法的拘束力を持つ「国際条約」ではなく、政治的合意・保障にとどまる「覚書」形式でまとめられました。この背景には、アメリカ側も当時の上院が国際条約を批准しないと見込んでいたことがあり、より制約の少ない形が選ばれました。
- 法的な義務や軍事介入の明記はなく、「安全保障上の協議」を約束する内容となっています。万が一の場合も「協議」までで、「自動的な軍事介入義務」など明文化されていません。
- ロシアはその後「核兵器で攻撃しない」こと以外に特段の法的義務を負った覚えはないと主張しています。ロシアが自分たちに不利な強い法的義務づけに反対した面もありますが、全体として「厳密な条約」にするには各署名国の思惑も一致しませんでした。
ブダペスト覚書は条約ではなく覚書
ブダペスト覚書は条約ではなく「覚書(Memorandum of Understanding)」という形で結ばれたため、法的な拘束力や強制力は限定的です。これは当事国が法的義務として軍事介入や具体的な行動を義務づけられているわけではなく、政治的な約束であることを意味します。
そのため、覚書が破られても国際法上の厳密な制裁措置や自動的な軍事対応が求められるわけではなく、効力面で弱い側面があります。これがロシアによるウクライナ侵攻後に、多くの国が覚書の効力の限界を指摘する理由です。
つまり、覚書だったためにウクライナの安全保障が十分に守られなかったという見方が強くなっています.
ブダペスト覚書のポイント
- 1994年12月5日、ハンガリーの首都ブダペストで、アメリカ・イギリス・ロシアの核保有3国が署名した覚書。
- ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンが核不拡散条約(NPT)に加盟し、旧ソ連から引き継いだ核兵器をロシアに移転することを条件に、安全保障を約束した内容。
- 署名国はウクライナなど3国の独立、主権、既存の国境を尊重し、武力行使や脅威を行わず、政治的・経済的圧力も控えることを誓約。
- 万が一ウクライナらが侵略・核兵器使用の脅威にさらされた場合、国連安全保障理事会の対応を支援すると約束。
- これらは条約ではなく覚書のため、法的拘束力は限定的で軍事的義務は明記されていない。
- ウクライナは核兵器を自ら放棄したのではなく、ロシアに移転した形であり、核を保有できないNPT加盟国となった。
- その後、ロシアが2014年クリミア併合や2022年ウクライナ侵攻で覚書を事実上破棄したため、ウクライナの安全保障保障は揺らいでいるとの指摘がある。
この覚書は、ウクライナの核軍縮に対して国家の安全を政治的に保障する約束であり、軍事介入の義務を負わせるものではなかった点が重要です。結果的に、安全保障の信頼性に疑問が生じているとされています.
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