2025年09月19日 養殖業倒産が過去最多へ 水産業界を揺るがす異変
- この記事は、日本の水産養殖業が異常気象やコスト高騰によって深刻な打撃を受け、倒産や廃業が過去最多ペースで増加している状況を伝えている。
養殖業の現状
- 帝国データバンクの調査によると、2025年1~8月の養殖業における倒産・休廃業・解散は合計27件で前年の通年19件を大きく上回り、過去10年で最多となる可能性が高い。
- 背景には海水温上昇による稚魚の死亡率増加、台風被害、輸入飼料の値上げといった気候変動・コスト面の影響がある。
業績動向
- 2024年実績では減益企業が29.5%に達し、コロナ禍後で最悪水準。
- 赤字企業は34.1%で3年ぶりに3割超え。
- 全体で業績悪化を示す企業は6割を超えている。
- 陸上養殖では特に電気料金の高騰が原因で赤字転落が目立っている。
意味するところ
- 養殖業はこれまで漁獲規制や天然魚不足を補う形で成長してきたが、近年は気候変動とコスト高が重なり、経営基盤が脆弱化している。結果として中小事業者の市場退出が相次ぎ、今後も倒産件数が増える可能性が高い。
気候リスクに直面した日本の水産業界全体の構造転換、再生可能エネルギー利用や低コスト飼料開発などの適応策が急務となっている。
この技術革新により、天然シラスウナギへの依存度が大幅に下がる
ウナギの完全養殖へ大きな一歩。コストが20分の1となる水槽の秘密
ウナギの完全養殖における最大の課題は、卵から孵化した仔魚(レプトセファルス)をシラスウナギまで育てる工程の高コストでした。従来は1尾あたり約4万円ものコストがかかっていましたが、新開発の水槽によって約20分の1、1尾あたり1800円程度まで大幅に削減できる技術が実用化段階に達しました。
このコスト削減の鍵となったのが、水産研究・教育機構、ヤンマーホールディングス、マリノフォーラム21による新型水槽の開発です。主な特徴は以下の通りです。
- 水槽の形状:
円筒を半分に割った「半円筒型」が最適で、直径50cm以下が成長速度・生存率ともに最も高いことが判明。 - サイズ・材質:
直径40cm、長さ150cm、材質は安価なFRP(繊維強化プラスチック)を採用し、従来のアクリルや塩化ビニル製よりも安価かつ大量生産が可能。 - 飼育効率:
1水槽で1000尾の仔魚を安定して育てられる(従来は20~80尾が限界)。 - コスト削減:
水槽自体のコスト低減に加え、成長率・生存率の向上で生産効率が飛躍的にアップし、1尾あたりのコストが約1/20に。 - 今後の展望:
自動給餌など省人化・省エネルギー化も進め、さらなるコストダウンを目指している。
この新型水槽は2024年12月に特許も取得済みで、今後の完全養殖ウナギの商用化における基盤技術となることが期待されています。
「人工ウナギ種苗を安価に大量生産することが可能になると期待されます」
この技術革新により、天然シラスウナギへの依存度が大幅に下がり、絶滅危惧種であるニホンウナギの資源保護や闇取引の抑制にもつながると見られています。
最大の課題は生産コスト
完全養殖の技術革新が進み、味や品質は従来の養殖ウナギと同等
完全養殖技術の進展
- 日本では、ニホンウナギの資源減少と絶滅危惧種指定を背景に、卵から成魚まで人の手で育てる「完全養殖」の研究が進められています。
- 2010年に国の研究機関が世界で初めて完全養殖に成功し、その後も生産コスト削減や生産効率向上の研究が続けられています。
- 2024年07月には水産庁が最新の研究成果を報告し、完全養殖ウナギの味や品質は天然の稚魚を使った従来の養殖ウナギと遜色がないと評価されています。
生産コストと課題
- 現在、人工ふ化から育てたシラスウナギ1匹あたりの生産コストは約1800円で、天然シラスウナギの約3倍以上となっています。
- コスト削減のため、餌の改良や自動給餌装置、成長の早い品種の開発などが進められています。
- 目標は1匹1000円以下のコスト実現で、今後の技術革新が期待されています。
業界の取り組みと規制
- うなぎ養殖業は農林水産大臣の許可制で、無許可での養殖は罰則の対象です。
- 東アジア各国と連携し、池入れするシラスウナギの数量制限や資源管理が行われています。
- 国の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに人工種苗100%の実現を目指しています。
企業・大学の最新動向
- ニッスイと新日本科学は、人工種苗の大量生産技術確立に向けた共同研究を2025年から本格化。
- 近畿大学も大学として初めて完全養殖に成功し、養殖用種苗の供給体制構築を進めています。
- 遺伝子組換え技術を活用したホルモン生産など、バイオ技術の導入も進展しています。
海外での動き
- ベトナムでは日本の技術を導入し、循環型のうなぎ養殖に成功した例もあり、海外での日本式養殖技術の展開も始まっています。
まとめ
- 完全養殖の実用化に向けて技術革新が進み、味や品質は従来の養殖ウナギと同等。
- 最大の課題は生産コストで、今後さらなる低減が期待されている。
- 企業・大学・行政が連携し、持続可能なうなぎ養殖の実現を目指している。


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