- 日本では、ニホンウナギの資源減少と絶滅危惧種指定を背景に、卵から成魚まで人の手で育てる「完全養殖」の研究が進められています。
- 2010年に国の研究機関が世界で初めて完全養殖に成功し、その後も生産コスト削減や生産効率向上の研究が続けられています。
- 2024年7月には水産庁が最新の研究成果を報告し、完全養殖ウナギの味や品質は天然の稚魚を使った従来の養殖ウナギと遜色がないと評価されています。
生産コストと課題
- 現在、人工ふ化から育てたシラスウナギ1匹あたりの生産コストは約1800円で、天然シラスウナギの約3倍以上となっています。
- コスト削減のため、餌の改良や自動給餌装置、成長の早い品種の開発などが進められています。
- 目標は1匹1000円以下のコスト実現で、今後の技術革新が期待されています。
業界の取り組みと規制
- うなぎ養殖業は農林水産大臣の許可制で、無許可での養殖は罰則の対象です。
- 東アジア各国と連携し、池入れするシラスウナギの数量制限や資源管理が行われています。
- 国の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに人工種苗100%の実現を目指しています。
企業・大学の最新動向
- ニッスイと新日本科学は、人工種苗の大量生産技術確立に向けた共同研究を2025年から本格化。
- 近畿大学も大学として初めて完全養殖に成功し、養殖用種苗の供給体制構築を進めています。
- 遺伝子組換え技術を活用したホルモン生産など、バイオ技術の導入も進展しています。
海外での動き
- ベトナムでは日本の技術を導入し、循環型のうなぎ養殖に成功した例もあり、海外での日本式養殖技術の展開も始まっています。
まとめ
- 完全養殖の実用化に向けて技術革新が進み、味や品質は従来の養殖ウナギと同等。
- 最大の課題は生産コストで、今後さらなる低減が期待されている。
- 企業・大学・行政が連携し、持続可能なうなぎ養殖の実現を目指している。