中小企業は「大卒が応募してこない」ため高卒を採用する傾向 高卒・中途・外国人などにシフト

高卒・中途・外国人などにシフト

マイあさ!マイ!Biz「中小企業にひろがる 脱『大卒採用』の動き」

  • 古屋星斗(リクルートワークス研究所主任研究員)

中小企業で大卒新卒採用をやめたり減らしたりする動きが広がっています。大卒求人倍率が特に中小で高く(8倍以上になる年もあり)、人が集まらないためです。日本全体で人手不足が続き、中小企業は採用を諦めたり、高卒・中途・外国人などにシフトしたりしています。

背景と現状

日本では少子高齢化で若い人が減っています。大企業は新卒を多く集めやすく、中小企業(従業員300人未満など)は苦戦します。リクルートワークス研究所の古屋星斗氏によると、中小企業の新卒採用充足率は低く、計画通りに集まらないケースが7割以上になる年もあります。

結果として、採用活動自体を減らしたり、大卒採用をやめる企業が増えています。代わりに高卒採用を強化したり、中途採用を増やしたり、外国人材を活用する動きが出ています。

なぜ中小企業が脱・大卒採用へ

  • 集まらない:
    大卒学生が大手志向で、中小の求人に応募が少ない。
  • コスト:
    採用活動や育成に時間とお金がかかるのに、すぐ辞める人もいる。
  • 現実対応:
    古屋氏の分析でも、中小は「諦め」の状態になりやすい。採用を続けても成果が出ないため、方向転換する企業が目立つようになりました。

日本全体での影響

この動きは地方や製造・建設・運輸などの業界で特に強いです。人手不足倒産も増えていて、企業は高卒者や即戦力、外国人採用を積極的に検討しています。大卒一辺倒から、多様な人材確保へ変わる企業が増えています。

古屋星斗氏の指摘は、長年中小企業の採用難を研究した内容に基づいています。

 

 

1.円安で日本人の労働コストが相対的に海外より安くなった

円安で日本人の労働コストは、米ドル換算では海外(特に先進国)と比べて相対的に安くなっています。これは事実です。ただし、アジア新興国と比べるとまだ高い水準で、製造業などの現場では輸入材料・エネルギーコストの上昇というデメリットも同時に起きています。日本全体で見ると、円安は輸出企業にプラスですが、中小企業の採用難や人手不足の根本解決にはつながりにくい状況です。

現在の状況

2025〜2026年も円安基調が続いています。

  • 米ドル換算の日本人賃金は、10年ほど前より大幅に低下したデータがあります。
  • これにより「安いニッポン」として、海外から見た日本の労働力や生産拠点としての魅力は相対的に上がっています。観光客増加や、国内生産のコスト競争力強化の面で効果が出ています。

先進国(米国・ドイツなど)と比べると、日本人の時給換算労働コストは元々低めで、円安でさらに目立つ差になっています。一方、中国・ベトナムなどのアジア新興国と比べると、日本はまだ3〜10倍程度高いままです。

中小企業への影響

中小企業が直面する大卒採用難の文脈では、円安が「日本人の労働力が安くなった」ことで、

  • 国内雇用を続けるインセンティブになる可能性はある
  • しかし、学生の大手志向や少子化による絶対的な若手不足は変わらない

ため、脱大卒採用(高卒・中途・外国人シフト)の動きを直接止める効果は限定的です。むしろ、円安による物価上昇(輸入依存の材料・エネルギー高)が中小企業の経営を圧迫し、採用余力を減らすケースもあります。

古屋星斗氏が指摘するような採用諦め傾向は、円安だけでは解消されにくい構造的な問題です。日本全体で人手不足が続く中、賃金水準の国際比較だけでなく、生産性向上や働き方改善がより重要になっています。

情報源は公的機関や研究機関の国際比較データに基づきます。

 

 

2.脱中国入日本で製造業のグローバル化からの揺り戻し。現場で働く高卒が必要になった

脱中国・国内回帰(製造業のグローバル化からの揺り戻し)は日本全体で進んでいます。地政学リスクや経済安全保障を背景に、政府が補助金を出して国内生産拠点を強化する動きがあり、製造現場で働く高卒人材の需要が高まっています。ただし、完全な回帰ではなく「中国+1」や分散が主流で、即戦力の高卒を求める中小製造業が増えています。

背景と現状

米中摩擦や有事リスクで、中国依存を減らす企業が増えました。日本政府は経済安全保障推進法などで、サプライチェーン分散や国内回帰を支援。半導体や重要部品の国内生産拠点整備に補助金が出ています。結果、一部企業で中国から日本への生産移転が進み、製造現場の人手が必要になっています。

高卒が必要になった理由

  • 製造業の現場仕事:
    機械操作、組立、加工、点検など、経験や技能を積む職種が多く、高卒の即戦力や工業高校出身者が適しています。
  • 人手不足:
    少子高齢化で若手が減り、特に中小製造業で深刻。2026年卒の高卒求人は製造業が最多で、求人倍率が高止まりしています。
  • 大卒との違い:
    大卒は研究開発や管理職志向が強く、現場作業を避ける傾向があります。そのため、中小企業は高卒シフトを強めています。

日本全体への影響

製造業(特に自動車、機械、電子部品など)で国内生産が増えると、地方の工場を中心に高卒採用が活発化。建設業も含め、現場人材の争奪戦が続いています。古屋星斗氏が指摘する中小企業の「大卒採用あきらめ」傾向と連動し、高卒や中途、外国人材へのシフトが加速しています。

ただし、円安や材料高でコスト増の課題もあり、完全解決には生産性向上(自動化など)も必要です。この動きは2025〜2026年も続いています。

詳細は最新の経済産業省資料やリクルートワークス研究所の報告で確認できます。

 

 

3.日本国内は大卒が営業として働くケースが増えた

  • バブル崩壊後の製造業の現地化の影響
  • ただし営業とは言え虚業に近い

バブル崩壊後(1990年代以降)、製造業の海外現地化(生産移転)が進み、日本国内の製造現場は縮小しました。その結果、国内に残った大卒者の多くが本社機能や営業職に回るケースが増えました。営業職といっても、国内市場の縮小や間接業務中心で「虚業に近い」と指摘される部分もあり、学生の大手・ホワイトカラー志向を強めた一因となっています。日本全体で製造現場の高卒需要と、営業中心の大卒供給のミスマッチが起きています。

背景と経緯

バブル崩壊後の円高やコスト削減圧力で、製造業は中国や東南アジアへ生産を移しました(産業空洞化)。国内の工場数は減り、製造業就業者も1990年代をピークに減少傾向に。企業は国内を本社・開発・営業拠点として残し、現地生産・現地販売を進めた結果、国内の大卒新卒は営業・企画・管理部門に多く配属されるようになりました。

大卒営業職の特徴

  • 国内市場中心の営業が多く、価格交渉やルートセールスが主体。
  • 製造現場の直接作業が減ったため、「ものづくり」より「売る」仕事が増加。
  • 一部では「虚業に近い」との指摘もあり、付加価値が感じにくい、成果が出にくい環境も指摘されます。

これにより、大卒者は「工場で働く」より「オフィスで営業・管理」を好む傾向が強まりました。特に中小製造業では、現場作業員として大卒を採用しても定着しにくくなりました。

日本全体への影響

製造業の空洞化は地方経済に打撃を与え、中小企業では現場人材(高卒中心)の不足が慢性化。大卒採用に頼るとミスマッチが起きやすく、古屋星斗氏が指摘する「脱大卒採用」の動きにつながっています。近年は脱中国・国内回帰で現場需要が再び高まっていますが、大卒の営業志向は根強く残っています。

この構造変化は1990年代から続き、現在も中小企業の採用難に影響しています。

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